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[コメント] 初恋のきた道(2000/中国)

力強い主題を客観的なナレーションで閉じ込めてしまったダイジェスト版、という印象が拭い去れない。
くたー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ダイジェスト版というのは、別に「どうして先生が連れてかれたか」とか「空白の二年間はどうだったか」といった物語の展開に関することではない。もっと日常のルーティーンをじっくりと積み重ねていって欲しかった、という事。季節の移り変わり、思いを込めた食事の数々、井戸の水汲み・・・・こんなちょっとした事柄にこそ生命の宿っている映画のハズで、それをじっくり繰り返して描写することで思いが力強く熟成されていくのだと思う。きれいに力強く一瞬写し取る反面、ナレーションのリズムに合わせて、見送る景色のように流れていってしまってる、という印象を受けてしまった。もっとじっくりと熟成させて、発酵を見届けたかった。

あとどうしても端折らないで欲しかったのが、自由恋愛もままならなかったあの村で、いかにして村の人たちが彼女の力強さに引きずられ、新しい息吹を受け入れていったか、ということ。コレも個人の思いの強さがどれだけの影響を周りに与えたかということで、後々の場面の事も考えると欠かせない要素なのでは?中途半端なナレーションで流して欲しくなかった。

s&m様(略称でスミマセン)のパロディー云々にも思いっきり共感です。アンチテーゼはその力強い存在感だけで、否応ナシに効力を発揮ものだと思うので、何も皮肉に構える必要は全くないと強く言いたい。この映画のような力強さは、真正面からのストレート勝負でしかモノを言わない。

最後にもう一つ。現在のシーンでのモノクロ。あえてモノクロを使った理由はよ〜くわかるのだが、でもあえてモノクロにして周りの景色を殺さないで欲しかった。たとえ彼女が命の半分をなくしたと同じだとしても、彼女が存在し、さらにはその物語がどこかで受け継がれているうちは、きっと周りの景色の美しさは死なないと思いたい。

とはいえ、彼女の愚かなくらいまっすぐな輝きを捉えたカメラは、素晴らしく美しい(アイドル映画として見れば、さらに大成功)。周りの景色の力強い美しさも絶品。なので単なる美談や批判の道具にしないで、ちっぽけな題材をもっと愛着を込めて描いて欲しかった。

(評価:★3)

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