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[コメント] 情婦マノン(1949/仏)

操舵室のショット。船の場面から始まるとは思っていなかったので驚く。しかも、ユダヤ人たちをパレスチナへ密航させる船だ。船倉のユダヤ人たちが唄うシーンで、本当の(船長が認識していない)密航者のカップルが見つかる。
ゑぎ

 この密航者カップルが本作の主人公、マノンとロベール。マノン役のセシル・オーブリーは、子供みたいに見える。私には、全然綺麗とも可愛いとも思えない。対して、ロベール役のミシェル・オークレールは、ジョニー・デップみたいな男前。私のタイプということでは、断然ロベールの方だ。

 さて、船長に事情を話す二人の回想によってプロットが進むパターンで、二人の出会いは、Dデイ直後のノルマンディー。ロベールはレジスタンスとしてドイツ軍と戦っている。そこに、住民たちからリンチに合う娘としてマノンが登場する。この女はドイツ兵に売春をしていたと皆が云い、マノンは勿論否定するが、真偽は分からない(勿論、やっていたのだろうと私は思う)。ロベールたちは、リンチを止めてマノンを確保し、教会で見張ることになる。こゝでのやりとりから、二人がすぐに恋仲になる展開は、いくらなんでも性急過ぎるだろう。ただし、教会の告解室や彫像を使った演出はいいと思う。また、ドイツ軍による激しい爆撃攻勢の造型も大したものだ。

 米軍のジープで逃亡をはかった二人は、運良く行きついた空き家のベッドで初めての夜をむかえるが、男の人と寝るのは初めてと云うマノン。時空は飛んで、パリのマノンの兄レオン−セルジュ・レジアニとのシーンになる。ロベールもレオンから仕事をもらい、なんとか生活できるようになるのだが、貧乏を嫌うマノンは、ロベールの知らないところで、レオンの後ろ盾の大物ポールと関係し、金をもらうのだ。

 というようなワケで、ロベールの稼ぎだけでは満足できないマノンの所業が描かれていくのだが、ロベールがマノンの後をつけると、高級そうなアパートへ入っていく場面で、彼女が高級娼婦になっている、というのは面白い。この邸のマダム役はガブリエル・ドルジアで、やっぱり見事な貫禄を見せる。ただし、こゝも、部屋で二人きりになってからの修羅場のシーンは、臭いディレクションだと思う。

 ざっくりプロットを省略して回想開けの場面へ飛ぼう。船長は情にほだされて、ユダヤ人たちと一緒に、パレスチナの海岸に近いところで二人を船から降ろす。こゝでエンドなら良いところだが、勿論、これは「マノン・レスコー」なのだから、こゝからもプロットは続くのだ。しかし、長い。砂漠を舞台にして、ユダヤ人たちと共にエルサレムへの(?)行進が続く。なんやかんやあって、マノンの服の左胸の部分が裂け、乳首が見えかけている、という印象的な画面なんかもあるのだが、この終幕も、私には酷いメロドラマに思える。

(評価:★3)

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