[コメント] BROTHER(2000/日=英)
ネット上での評判を見聞きすると、北野映画は、表だって賛否両論が繰り広げられているようです。それは、映画をたくさん観てる人もそうでない人にも、観る機会が多いことの表われでもあるでしょうし、そうした映画監督は邦画界では今時めずらしい存在であるからこそ、その希少価値を北野武にまず見出してしまいます。
さて、今回の「BROTHER」ですが、北野映画の最近の傾向、「世界に向けた映画作り」を集大成し、なおかつ、海外賞ねらいの技法も導入した映画だと思います。ヤクザを象徴とした、世界の片隅日本の「世界的な日本像」をサービス精神旺盛に表現しながら、独特の横のつながり「兄弟仁義」もタイトルとともにそこに象徴させています。
「BROTHER」には、過去の北野映画と同様なシーンが多数織り込まれており、場面は違えど、その意味する部分は恐らく同様なのでしょう。緊迫した状況の中における「浜での無邪気な遊び」、銃撃戦の「閃光に映し出される静止した画像」、突然訪れる「死、死、死」など。おなじみ「北野ブルー」は、一部でしたが・・・(笑)。
世界に向けるための、わかりやすい表現は今迄になかったもので、それに対して、従来のファンは物足りなさを憶えるのかもしれません。
賞取りに向けた作風も、映像の外における音声のやりとりや、わかりやすい、傾けた画像の推移による場面展開など、何か新しいことをしたい、という意欲が感じられます。
展開上で意味が汲み取れなかった部分も、私としては多々ありますが、小気味よいテンポで進む拡大・破滅への展開の末、無意味な結末で語られる、アメリカ人による「兄弟仁義」のシーンは、日本人の私でも不可解な、しかし、身についているような不条理さの意味を、クレジットが流れる暗闇の中で、いつまでも問い掛けられているようでした。
死に魅入られた人間は痛みを伴わないけれど、生を求める人間には痛みが伴う、なんてのは、『HANA−BI』からのテーマなんですかねぇ。言葉足らずですが、語らずにはいられない映画でした。
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