[コメント] しあわせ(1998/仏=カナダ)
映画を見終った人むけのレビューです。
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事故で息子と愛人を亡くし、彼らの足跡を追って旅をする女性と盗まれた彼女のビデオカメラを偶然買った男性が彼女探すという2つのアプローチで描かれる人間ドラマ。
タイトルとは裏腹に次々と不幸になっていく主人公ミリアムの前半の展開は観てて本当にかわいそうに思うぐらいに上手く描かれていて、ミリアムが北極グマに突然近づいたり、空港で息子の形見のビデオカメラを盗まれたことで突然取り乱したりするなど、大切な人を失ったことへの嘆きが顔の表情からでも十分伝わる。一方で後半は彼女の盗まれたビデオカメラを偶然買った教授の男マルクが今度は彼女の映像を見る内に彼女を探すという展開で、前半でのミリアムの旅の痕跡がそのままマルクのエピソードの伏線になるところはなかなか面白い。
ビデオの映像のミリアムが寂しそうだったからという理由だけで、婚約者をそっちのけにして赤の他人であるミリアムを探しに行くマルクの姿勢は少々度がすぎていて肩入れしにくい部分もあるが、曲がりなりにも彼女に気持ちが通じ、中盤でマルクがビデオレターがミリアムに思いを伝えたのと同じ方法で、終盤、彼女がマルクに思いを伝えるところはなかなか感動的。
しかし、ミリアムの悲劇へ繋げるための伏線だったとしても、前半のミリアムとピエールの恋愛エピソードはかなりお気楽な展開で、その後の悲劇があまり悲惨に伝わらず、映像的にも整合性が取れていないのは残念。
ミリアムの前にいつも男性が現れるところに、不幸に遭っても彼女の前にいつも優しい男性をついているというこの映画の根底にある愛のテーマが垣間見えるが、それが中盤に連続的に見せられることで、矢継ぎ早に御都合主義的な部分を残す結果となってしまい、映画の印象を少々悪くした。
映像的には序盤のベニスの街並みなど様々な景色の映像が非常に美しく印象深い。
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