[コメント] 寒い国から帰ったスパイ(1965/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ル・カレによるエスピオナージュの同名小説の映画化作品。原作は先に読んでいたが、たいへん優れたリアリティに溢れる作品だった。たいへん面白い作品なのだが、リアリティに溢れすぎていて、読み終わったらどんよりと落ち込んでしまうほどだった(笑)。その中でラストにひねりを利かせたのは上手かったけど、そこに至るまでの課程がとにかく読んでるだけできつかった。ここまでやらせるのかよ。と言った感じ。
これを映像化するって事は、かなり陰鬱な雰囲気な作品になるだろうとは思っていたが、予想に違わず。モノクロ映画という効果もあって、たいへん暗い感じに仕上がっていた。しかし、それが007とは違い、一種異様なリアリティを持って迫る。劇中でアクションシーンに爽快感はなく、ひたすら任務に忠実な主人公は、あくまで数々の機関の手駒でしかない。
スパイというのは銃を片手に活劇を行う存在よりは情報収集が主な存在であり、時としてこのような謀略も行う。結論を言えば実際のスパイの活動というのは映画向きではないと言うことだ。しかも本作は原作に忠実に映画化してくれたので、救いようのない物語になってた。
本作も実際は活劇らしい活劇が無く、会話中心(しかもその大部分は相手を苛つかせようとする)で、観ていてどっと疲れる感じがする。原作通りだから、それは正解なんだろうけど、観終えた後の爽快感にはほど遠く、なんか落ち込んでしまいそう。
ただ、この映画の素晴らしいところは、冷戦下のベルリンという町をしっかり撮り切ったと言うことだろう。東西に分けられ、まるで島流しにあったような西ベルリン。しかし孤立しているはずの西ベルリンに自由が溢れ、大多数地域であるはずの東ベルリンが窒息するかのような息苦しさに溢れている。勿論これは西側の目で描いた作品には違いないが、壁一つ隔てて異質な別世界となるベルリンという特殊な町をよく表していたと思う。
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