コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 青春がいっぱい(1966/米)

本作もコロンビアロゴで遊ぶオープニング。ロゴの右端Aの文字に黄色い羽根の天使が現れる。クレジット・バックは、天使と修道女たちのアニメーションだ。天使の羽根が飛び、それに合わせて、左から右に黄色いスクールバスが走って実写に転換される。
ゑぎ

 バスは駅へ。バスの移動ショットと呼応するように、銀色の列車が左から右へ走る。列車内には新入生たち。まずは車内で煙草を喫うメアリー−ヘイリー・ミルズ。隣の御婦人から「まだ子供なのに」と注意されると「私は煙草を喫い過ぎて背が伸びなかった大人よ」と答える。メアリーはレイチェル−ジューン・ハーディングと知り合う。彼女らが入学したのは、修道院を併設した、お城のような外観の女子校だ(ドラゴンが似合うとレイチェルが云う)。

 本作はこの新入生たちの卒業までの3年間が描かれる映画。主人公はメアリーとレイチェルのコンビと、校長先生でもある修道女長−ロザリンド・ラッセルの3人と云えるだろう。ちなみに、当時ヘイリー・ミルズもかなりの人気者だったと思うのだが、やはり一番のビッグネーム、ロザリンド・ラッセルだけは照明も特別扱いで、彼女のショットは少しだけ沙がかかり(ソフトフォーカスになり)、瞳には常にキーライトが入っている。

 学生生活の描写は、ほとんどメアリーとレイチェルの校則違反やイタズラを短いエピソードで繋ぐものだが、少々散漫かつ緩いコメディ場面ばかりにも感じる。中では、地下室でメアリーとレイチェルが葉巻をふかし過ぎて火事騒ぎになるシーンにおける、唐突な消防車の走行ショット挿入がいいと思った。こういうカッティングの呼吸は、もっぱら犯罪映画を手掛けたルピノらしさじゃなかろうか。

 また、ふざけたイタズラ場面に混じって、メアリーが修道女長や他の修道女らのことを、しっかりと観察している様子も繰り返し描かれていて、実はこの部分が本作を名作足らしめているのだと思う。例えば本作にはクリスマスの場面が2回あるが、1回目は老人ホームの慰問が描かれている。ケーキを配るメアリーは、孤独な老女を抱きしめて励ます修道女長を見る。後でメアリーは「私は若く裕福なうちに死ぬわ」と呟く。2回目のクリスマスシーンで修道女たちが唄う賛美歌は、「あめのみつかいの(荒野の果てに)」だ。メアリーは夜、すきま風を防ごうと閉まらない窓に枕を詰めるのだが、その時、雪の降る中、庭の聖者の銅像に聖体(パン)を配る修道女長を見る。

 あるいは、家庭科が苦手な(特に裁縫がメチャクチャな)レイチェルのために修道女長が夜中まで手伝う場面でも、朝方メアリーだけがそれを知る場面があるし、元気だった数学教師のシスターが急死した際、棺の前で泣く修道女長を見るのもメアリーだけだ。しかし劇中では、全く修道女長に対するメアリーの想いが科白で語られない、でもラストには行動で示される、という演出が懐深く心揺さぶられる。全体に、犯罪映画で見せたタイトな演出はほとんど見られないが、ファミリー映画として立派な出来だろう。愛すべき名作だと思う。

#備忘でその他の配役等を記述。

・修道女たち。楽団を指揮するビニー・バーンズ、体育のメアリー・ウィックス、数学担当はマージ・レドモンド、そして美人の修道女はカミラ・スパーヴだ。

・社外から招いたダンスを教える特別講師はジプシー・ローズ・リー。メアリーの叔父にケント・スミス、ライバル校の校長はジム・ハットン

・劇中出てくる映画関係の科白。メアリーは自分の別名をキム・ノヴァクと云い、レイチェルは、ジャック・レモンが好きと云う。

・町でブラジャーを買うシーンで、メアリーは、ジェーン・マンスフィールド、レイチェルはロック・ハドソン!と云うのは意味深。

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。