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[コメント] 或る夜の出来事(1934/米)

シンプルな映画作りに瑞々しい詩情が湛えられGOOD
junojuna

 ロマンチック・コメディの生命線といえる瑞々しい詩情が全編に渡って湛えられていてとてもさわやかな印象が心地よい傑作である。低予算、大半がロケ撮影という条件で撮影されながら映画の活劇性をしっかりと内包した高度なバランス。とても洗練された見事な演出である。何よりクラーク・ゲーブル、クローデット・コルベールのチャーミングな魅力が本作に一層の輝きを与えている。ゲーブルの股上の深いパンツともっちりとした尻、ヒッチハイクシーンの演技内演技。コルベールのパジャマ姿と豊かなファニーフェイス。映画のいたるところに散見する愛らしい印象は映画的記憶の宝である。時に人は映画に憧れ映画を模倣することで人生を生きようとする。不意にそんなことを思った。おそらくこの映画に限らぬがこの時代に描かれた心の優しき良き男性像は、無数の無遠慮で勝手にヒロイックな自称紳士を生み出した。今ここであえてその起因となったであろう映画を装置映画と呼ぼう。しかし、憧れゆえに理想像を気取るその姿勢はハタ迷惑ではあるがそれでも気のいいおっさんたちであることはきっと間違いないであろうし、極端に言って少なからず誰もが映画の影響を受けつつ人生を生きてみようとするのでそれはそれでよしとして、そんなことをのたまわってみたくもなる改めてジェネレーション感覚を気付かせてくれる時代性の濃い良き映画であった。

(評価:★4)

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