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[コメント] サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS(2001/日)

最初に設定を知った時に「思った事が相手に伝わる?読み取るんじゃなくて?」と思いました。この一風変わった世界観を成り立たせ、ドラマを生みだした原作にリスペクト!(reviewは長文です)
新人王赤星

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私は原作のサトラレが大好きです。

映画でサトラレの存在を知ってから原作の漫画を読みました。 はじめはよくある相手の心を読み取るエスパー物の逆バージョンという設定に新しさを感じたのですが、味わった事が無かっただけに、こういった設定で面白い話が展開出来るのか想像できず、期待もしませんでした。設定負けしそうだなと。 しかし皆さんの意見を拝見して思ったんですが、なるほど『トゥルーマン・ショー』の延長とも言える世界観ですね。 あちらは行動の全てが回りの人間に筒抜けになってしまうのに対してこちらは思った事までも筒抜けになってしまう、このワンポイントにより物語は無限の広がりを見せています。見事にこの設定からドラマを捻り出す事に成功し、人間と社会へ多くのテーマ提示し、ドラマを生み出しています。

周囲に想いを悟られてしまう人間を保護(言葉が悪い?)しようという国家規模の対策は人権無視とまでは思わずに、肯定的に受け取りました。才能の保護というだけでなく、一般人と同様に暮らしていれば明らかに弊害が双方に起こり得るだろうという人物への環境整備は、皆が平等に暮らしていく為の妥当な手段だと受け取れます。サトラレ保護法にも、可能な限りサトラレの意思を尊重するとありますので、ここでの保護の仕方は概ね問題無しと私は感じました。しかし、そのあり方に対する議論は重要ですし、現実社会に通じる問題でもありますよね。ただ、サトラレを保護する側の葛藤が映画では鈴木京香一人だったので不満1。あれでは確かにorekyoさんの様に一方的な管理社会と捉えられます。

「サトラレだって人間です」

大袈裟かもしれませんが、このセリフは普遍性を持って社会に通じると思います。 特別視されている人や差別されている人の悩み、苦しみは自覚無自覚に関わらず見え易いところにも日常の当たり前の様にころがっている見え難いところにもあります。

「普通と違う人」と世間の関わり合いのドラマという点でも非常に面白い。

「あのコは正直で声が大きいだけ」

このおばあちゃんのセリフはとても深く感動的です。全ての人と同様、個性を持ってるに過ぎない。

このドラマの真のテーマは、サトラレという人間を与えられてしまった世界に住む人間の心の葛藤によるドラマにあると思うのです。ファンタジー色にならず、サトラレが現れた社会をシュミレーションする中で、サトラレと接する人々の葛藤のドラマだと思うのです。 サトラレが恋をしたら。サトラレが医者を目指したら。サトラレによるインフォームドコンセントは。

本心を悟られては危険な競争社会です。便利な世の中になってたくさんの恩恵を預かり、顔を見ず、相手の表情、皮膚観、オーラを感じなくとも意思疎通が可能だ。現に私はいつでも携帯で人と会話でき、メールを送り、こうやって長ったらしい文を時間をかけてネットに書いている。顔の見えないコミュニケーション不在の時代に私達はサトラレを見る事によって自分を見る事になる。悪意も欲望も計算も善意も持つ普通の人間であるサトラレを通して自分を見る。幾つも仮面を被った私達の社会ではぼやけ易い人間の本質を知る事によって、人間を嫌悪するだろうし、愛しくもなるのです。皮肉にも最後には本心が筒抜けになるサトラレを患者は求める様になってしまう。現状の病院を考えるとその方が安全かも、気持ちはわかるな〜。映画ではサトラレが私とちがって天使のような人物だったので不満2。

映画では、こういった葛藤をカットして単純に原作のドラマチックな出来事を再現したに過ぎないと感じました。もっとも、あのドラマチックな感動を本当に再現出来たらもっと点数を高くつけたでしょう。 一話完結の原作の映画化ではこれ位が妥当かな?と思わなくも無いですが監督の相変わらずのチープな演出で凡作となってしまった。それでも元が素晴らしいから見れる映画になったと思うし、泣いた人が多いのもわかります。

トゥルーマン・ショー』と同じく、こんな時代ですから自分がもしやこの主人公と同じ境遇で周囲の人はそれを隠しているのでは?と感じる人がいたかも知れません。

ところで、私はあるとっても暑い日、仕事中に疲れて本屋に入って涼んでました。そこで立ち読みしたのがこの本。一度読んだことある話ですが心身共に疲れきっていた私は店内だというのに涙がポロポロと止まらず、必死で人目を気にしながら涙と鼻水を拭いました(笑)そんなちょっとした想い出のある物語です。

何か原作のレビューっぽくなってしまいました。ちなみに原作では棋士を目指すサトラレ(しかも女子高生)の話や、サトラレの存在を疎むものや、殺意を持つサトラレなどが登場します(←お前は出版社の回し物か)

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Yasu[*]

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