[コメント] 八日目(1996/仏=ベルギー)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
どうも“ダウン症”だけに目が向いてしまっている人々が多く、そのコメントが多すぎる。それもいいだろう。でも、視点と沢山の引き出しを放棄するのは勿体ないよ。
今、異常者で溢れかえる世の中。人殺し、強姦、強盗、抗争、詐欺、偽善者政治家、嘘つきメディアetc...異常者に囲まれている状態に於かれている私たちの立場をお忘れなのか?いるだろ?自分もそうだろ?酔って横暴を振るう人や強引に商品を持っていく人なんてざらじゃないか。
この映画、「障害者」この言葉に惑わされすぎな社会に対しての改心の一撃を放っている。「障害者」という言葉でひとくくりにし、個々人の意志を蔑ろにする施設と、個々人の洗脳教育&統制に奔放するサラリーマンの働く場所の一致。そう、彼自身も「障害」を持っていることの証明。現実社会に生きる人々の非人間的本能の盲点を突いてきているいるのではないだろうか。
人間誰しも、絶対に生きしまっていく中で「障害」を幾つも、数え切れないほどに抱えてしまう。それも意識、無意識問わず。その「障害」は他人が推し量ろうと思っても量れない。人によっては、それを乗り越えることで幸せにもなれる台だし、得るモノは限りなく無限に近い。
その言葉が作り出した幻影に縛られて、正しい判断をくだせない人向けの映像が含まれたこの作品は、“生”の覚醒の役割を果たしていると思う。受け手の脆弱で幼い鑑賞態度によって、発揮されないかもしれないが、私は心の栄養分や定着液となり一段と人間に戻れた。
[サラリーマン男の描写の弱さの意図]
彼の事細かい描写を排除したのは意図的ではないだろうか。この問題とは、両極端に触れやすく振れやすい。どの映画にも言えることだけど、まず見ている人に必要なのが感情移入させること。その上で問題の傷の大きさや、問題の抱える可能性を感じさせていく作業に入るのが映画。
この作品の場合は、“サラリーマン”という大きな枠、つまり万人に共通する又はリアルを感じられ易い範囲を設定し、すんなりと話に入れるようにした監督の戦略みたいな事を感じた。
これで、もし、金持ちだとかある職種の事細かい描写を作中のサラリーマンの男性に入れると、冷めてみてしまう恐れがあり、作者の伝えたいことの半分にも満たないメッセージしか見る者に届かなくなってしまう恐れがあると思う。
この作品は見る時期、自分の経験値の度合いによって変化し、それと共に答えの質が向上するのだろう。一筋縄では解決しない問題の解決法の模索を促進させてくれてたり、個人的に言えば、過去の過ちの重大さを思い知らされたり。ホントに良い映画に巡り会えたて良かったです。
笑顔が似合う彼の空を舞った姿に涙が止まらなかった。
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2003/2/3
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出来れば映画『音のない世界』も見てください。障害という言葉を使うのが果たして正しいのか、その答えがこの映画と共に導き出されるきっかけとなると思います。是非。
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