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[コメント] ママと娼婦(1973/仏)

全編、短い暗転で場面転換する。いわゆる劇伴なし。人物がレコードをかける場面は何度も出て来て、環境音としてのBGMは沢山入る。冒頭はジャン=ピエール・レオ−アレクサンドルが朝起きるシーン。
ゑぎ

 床に置いたベッド。横の女性はまだ寝ていて、顔が映らない。アレクサンドルーレオは道路で、別れた恋人ジルベルトを待ち伏せ。細菌学の講義を聞かせてくれ。断られると、結婚してくれ。ジルベルトとカフェでの会話。彼女は元カノだと分かる。もう別の男と暮らしている。いっそ、今の彼と結婚しろ、次までに結論を聞かせて欲しい、と云うアレクサンドル。

 カフェ「ドゥ・マゴ」の場面。屋外席。この舞台が何度も出て来る。女性が見ている。後をつけて話しかけるアレクサンドル。すぐに場面転換して友人の家。アレクサンドルのドアのノックが独特。この友人がカッコいい。ジャック・ダニエルズを回し飲みする。アレクサンドルはナンパして電話番号を聞いたと云う。SSの本。友人は親衛隊の愛好者か?後の場面では、車椅子を障害者から盗んだと云い、部屋で乗っている(この友人役の人、私にはユスターシュ本人に見えたのだが。終盤、スーパーマーケットで登場するのがユスターシュだというコメントは見かけるが)。

 レオの家は、実はベルナデット・ラフォン−マリーの家。マリーはブティック経営者だ。冒頭シーンでは、顔を隠しているという登場のさせ方がスター女優らしい。アレクサンドルはマリーにも、ナンパした話をする。電話はするつもり。マリーが余裕っぽく微笑む。本作中、ラフォンは何度も胸を披露する。部屋で全裸のフルショットもあり、テンション持続に貢献する。

 ナンパした女性に電話し、ドゥ・マゴで待ち合わせ。先に偶然ジルベルトが来る。こういう部分でドキドキさせるのが上手いのだ。ジルベルトは、今の彼との結婚を決めたと云う。次に友人が来る。結局、ナンパした女性は来ない。待ちぼうけ。再度、女性に電話すると、忙しかったと云う。アレクサンドルは全然気にしていない。女性は看護師。今日の夜なら会えると云う。そしてドゥ・マゴ。彼女の名前はヴェロニカ−フランソワーズ・ルブラン。ポーランド系。病院の寮に住んでいる。

 次のデートだったか、ヴェロニカは男性遍歴について、あけすけに語る。まだ帰りたくない、水辺へ。セーヌのこと?2人はキスする。別のデートで、お金もないので、僕の部屋に。部屋でマリーに紹介する。ヴェロニカが帰った後、マリーは、ヴェロニカのことをボロクソに云う。胸の形を除いて。

 というワケで、男1人と女2人の割り切った関係・生活が描かれる。マリーがロンドン出張の際、ヴェロニカを部屋に入れ寝るシーンで、彼女も胸を見せるが、ラフォンに比べると出し惜しみしている感じ。ヴェロニカが泥酔して夜中4時に来るシーン。全裸でベッドから立ち上がるラフォン。ヴェロニカは最初は、マリーとアレクサンドルのことを蔑むが、次第に仲良くなる。

 3時間を超える(4時間に近い)長尺だが、全く緊張感途切れずに見る。それは上にも少しだけ触れているテンションの持続に寄与する演出が盛り込まれているからだ。特に、終盤に良いシーンが立て続けに現れて、満足感を上げて終わるのも良いところだ。パーティ準備中のマリーとアレクサンドルの修羅場や、ヴェロニカが、誰とでも寝るので娼婦と云われる、でも、娼婦なんてこの世にいない、と云う長回しのショットなんかもあるけれど、部屋でマリーがピアフのレコードをかけて、ベットに横になり、一曲まるまる固定ショットのワンカットで見せる演出が白眉だと思った。途中から両手で顔を覆うマリー。このショットには震撼とさせられた。このすぐ後の、ヴェロニカの部屋のレオのショットでエンド。これにもズシリとした衝撃がある。傑作。

(評価:★4)

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