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[コメント] ダーティ・メリー クレイジー・ラリー(1974/米)

秀作。タランティーノを経由してから改めて見ると発見も多い。私としては『バニシング・ポイント』よりこちらを買う。
shiono

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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ヴィック・モローがヘリコプターで捜索するクルミの森はベトナム戦争であり、燃料切れで着陸したヘリのローターがゆっくり止まるそのシニカルな徒労感も忘れがたい。警官たちがただの一度も銃を見せないのもリベラルだし、赤色灯を装備していないハイパワーなパトカーはアナーキーですらある。ここにあるのは権力と反権力の構図ではない、勝者不在のアメリカの姿だ。

だからこそ、その結末から逆算した主人公三人の人間関係が、ある爽やかさを伴って生き生きと感じられる。走行中と停車中、ドライビングテクニックと頭脳戦のバランスもいい。そしてその背景となる土地のありようは、あるときには引きの構図で道を捉え、またあるときは彼らが会話する車中の窓外を飛び去る風景として描かれる。

ま、こんな風に掘り下げて見るまでもなく、例えば終盤のビリヤードシーンにおける緊張感の演出にしても、ベル206Bヘリコプターと1969年式ダッチチャージャーが繰り広げるアクション演出にしても、アナログの肌触りがあるグラマラスな仕上がりで満足できる。今のアメリカ映画ではあまり聞かれないようなスラングも耳に楽しい。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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