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[コメント] ザ・レイプ(1982/日)

田中裕子は鳩尾を殴られて身動きできなくなり、鼻血を流す。娯楽映画の「ロマンチック」なレイプ描写を正して当時力があった。顔殴られて前歯が全部なくなるなど、よくある被害例らしい。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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男遊びの激しい田中の来歴をみて、レイプ被害を語るには相応しくない造形なのではないか、という感想、それこそが本作の張った罠であろう。それは本作の弁護士の無茶な弁論と同じなのだ。派手なオンナはレイプへの閾値が低かろうとの作戦で田中を責めたて、処女はいつ失ったをはじめプライバシーを身包みはがしにかかり、裁判長もこれに「理解」を示す。法律こそがセカンドレイプを成立させている。派手な交友関係があろうがなかろうが、レイプは犯罪である。いやあ、気持ちの悪い弁護士だった。残念ながら半世紀後の現在も状況は大して変わっていないだろう。

風間杜夫の典型的な男性像、「忘れろよ」「裁判に勝って、それで何に勝ったことになるんだ」「傷だらけになるぞ」。最後に田中は風間を捨てる。シャワーを浴びながら電話にでない。傷だらけになった彼女は微笑んでいる。「何に勝った」のだろう。風間のような世間体から成る粘着質な言説に勝ったのだ、それはシャワーで洗い落とせたのだ、と受け取った。

レイプ翌日の電話と扉ノックはいいホラーで、思わず110番する気持ちがよく判る。こんなことならホテルにでも泊まりに行くのだろうか、しかしなんで被害者が逃げねばならないのだろう。辛気臭い演出が少ないのも好感。田中や津川雅彦のボソボソ喋りが聞き取りにくいのだけは難。酒場で延々口説く中年男が加害者の父親と判明する件は上手いものだった。田中の水泳はとても速い。再見。

(評価:★5)

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