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[コメント] 少女娼婦 けものみち(1980/日)

神代辰巳の『赫い髪の女』に続く日活ロマン。これも傑作だ。この時期の神代の好調ぶりがよく分かる。お得意のシーケンスショットとアフレコを基本とする演出。
ゑぎ

 しかし、随所でキャッチーな短いショットも挿入する。あるいは交接シーンの長回しのなかで、一瞬ジャンプカットのようにコマを落とすといったこともやる。これがカッコいいと思う。

 あっと驚くような強い画面を列記する。まずは長回し。冒頭近くの浜辺の2人、サキ−吉村彩子と外男−無双紋の場面での、手前に排水口からの水だろうか、落ちる水を取り入れたショットは、何だこりゃ、となる。手持ち移動の寄りや、緩やかなズームインを使ったシーケンスショットは無数に出て来るが、中でも、ホテルのベッドで、サキとアタル−内田裕也がまぐわうショットは、2人に寄っていったあと、窓から俯瞰で浜辺の外男を小さく見せる、実にクリエイティブなショットになっている。この後、浜で海鳥を埋める外男が繋がれ、さらに、時空をジャンプして、砂を掘るサキにマッチカッティングするのだ。あるいは、夜、屋台でサキと母−珠瑠美が飲むシーンから、浜辺へ下りて来る母の長回しショットも良い造型だと思う。サキが来て、浜辺で母の乳房を吸う。あるいは、サキとアタルが朝日の逆光の中、港の護岸ブロックの蔭?で交接するショットも強烈だ。後景に出港する漁船が何隻も映りこむ。そして、ラスト近くの、入水する外男をアタルが波間に入って助け出すシーケンスショットの迫力。これは命がけの撮影現場だっただろう。

 短いイメージ的なショットインサートでは、空を飛ぶ海鳥が海に落ちるショットが象徴的に何度も使われる。他にも、海や空、走るトラックの車輪、浜でダンスするサキ、母が男−高橋明に抱かれるのを見る少女(子供時代のサキ)、サキがマスターベーションするシーンで手鏡に映った父親のイメージ、打ち上げ花火をするサキなどが効果的だし、ラストカットの潔さもいい。

 俳優について少し触れておくと、主人公サキを演じる吉村彩子という女優は、どうも映画はこれ一本限りしか出ていないようだが、科白回しはまだまだ拙いけれど、ちょっと梶芽衣子を彷彿とさせるようなキリっとした美形だし、何よりもファイトがよく伝わり、将来性を感じさせられる。彼女がこの後活躍しなかったのはとても惜しい。あと、内田裕也も良い役者だ。その荒々しさの一貫性がいい。彼が翌年の『嗚呼!おんなたち 猥歌』で再び神代と組むことになるのもうなずける。

#消波ブロックの間を歩く三谷昇。壺坂霊験記(妻は夫をいたわりつ〜)を唄う。

(評価:★4)

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