[コメント] ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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少年ムサシの父親(赤井英和)が、何故か義理の父親でムサシと直接の血の繋がりがないということが気に掛かった。警察官という、社会的意義を背負った職業に就き、幼い息子を信頼して見守ることの出来る、言わば理想の父親。だが彼は実の父親ではない。その距離が必要なのはどうしてなのか。その距離があるからこそ、むしろ彼は父親らしい父親でいられるのだろうか。直系の歴史を引き継がない、押し付けない父親。
コスモスは命を救ってくれた少年ムサシと契約を交わす。その大地に屹立する巨大な姿は父親のようでもあり、またその流線的なデザインと柔らかい物腰は母親を思わせもする。地球人の地球への既得権を守る為にやむ得ずバルタン星人を戦うことになるコスモスは、国連軍みたいなものなのか。そして同じく無数の子供達の未来を背負い戦う父親であるバルタン星人。そのどうしようもない亀裂に「涙」という人間的な記号を媒介として差し挟むことは、超人と怪獣との戦いを見世物としつつ尚且つそれを超えるテーゼを見出さなければならないと奉じる子供向けの怪獣特撮映画として、ギリギリの選択なのかもしれない。
それを超えるテーゼとは、すなわち共生の夢。だがそれについては今のところ積極的な判断はない。取り敢えず無駄に殺すな、取り敢えず争うな。少年ムサシの父親は、義理の息子を見守ることは出来ても、教えを授けていきさきを指し示すことは出来ない。「優しさ」と「慈しみ」の父親。それはコスモスにしても変わらない。それでもコスモスが格好いいのは、大きくて強いウルトラマンだから。そういうものかもしれない。
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