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[コメント] 光の雨(2001/日)

集団的な小さな納得を求める「クイズ100人に聞きました」みたいな作劇は、かつてのマルエン墨守の観念的な学生運動から遥かに遠い(含『TATTOあり』のネタバレ)。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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物語のカタルシスを相対化する方法は、ブレヒトの(劇的演劇に対する)叙事的演劇が想起される。異化効果(映画の代表格はゴダールだろう)は観客をカタルシスから遠ざけ、理性的にさせるためのものだった。これは本作の方法に似ているのだが、何か決定的に違う。

本作は理性というより常識を呼び覚ます方法に見える。何でこの人たちは私刑に至ったのかを延々ディスカッションして、出てくるのは凡庸な感想に過ぎない。「クイズ100人に聞きました」はクイズ番組を正解から投票に変えたと云われたが、そんなようなものだ。集団的な小さな納得を求める作劇は、かつてのマルエン墨守の観念的な学生運動から遥かに遠い。

個人へのインタヴューの回答は純粋にその俳優本人のものなのか。それとも脚本通りに喋るのか。この区別がつきにくい。これもこの方法の限界だろう(もしこれがドキュメンタリー映画なら、脚本があれば詐欺だが、本作はそこは許されてている)。

処刑される前に「俺は革命がしたかった」という一言が記憶に残るが、これは劇中の科白だった。原作はいいものなんだろう。「敗北主義は我々の最大の敵」「死を乗り越えねば革命戦士にはなれない」と行う鉄拳制裁は、戦中の陸海軍の上官のそれと同じ(もっとひどいが)という、歴史は繰り返すの感慨というか諦念を覚える。

演出はいい加減で、これほど下手糞な大杉連を観る機会もそうないだろう。最後の山荘の銃撃戦をほぼ略するのは『TATTOあり』と同じで二番煎じ。なんで「阿南」という名前をわざわざ使うのだろう。個人的には『実録・連合赤軍』があるからもう不要な作品。

(評価:★2)

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