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[コメント] 仮面ライダー対ショッカー(1972/日)

「東映まんが祭り」というのは凄い状況の中で公開されたようだ。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 記念すべき仮面ライダーのスクリーン版は大好評だったようで、これ以降仮面ライダーに限らず東映のTVヒーロー達は次々と銀幕にも進出した。『飛び出す人造人間キカイダー』『飛び出す立体映画イナズマン』『秘密戦隊ゴレンジャー・爆弾ハリケーン』『劇場版ザ・カゲスター』『宇宙からのメッセージ銀河大戦』『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』……もう、山ほどある。最近もガオレンジャーとか仮面ライダーアギトの劇場版が作られたりして、今でもTV特撮作品にとって劇場進出とは正に夢舞台みたいなものらしい。まあホントは、劇場にもっと子供を呼び込もうという戦略かもしれないが、そんな夢の無いことを言ってはいけない。TVヒーローの劇場版、万万歳である。

 しかし本作の公開時期は、東映が映画ではバイオレンスとポルノ、TVではアニメと特撮、その両方に同時に力を注いでいた頃でもある。深作欣二中島貞夫鈴木則文石井輝男らがその腕を振るい、菅原文太梅宮辰夫が暴れまくり、杉本美樹が脱ぎまくっていた時期だ。「東映まんが祭り」というのは、そういう映画がわんさと公開されていた頃、子供が劇場に集まりやすい春と夏の2、3週間というスケジュールで公開されていたのだ。

 本作が公開された1972年春の東映まんが祭りの場合、同じ東映系列の映画館では前に『関東緋桜一家』『夜のならず者』、後に『望郷子守歌』『銀蝶渡り鳥』というプログラムが組まれていて、まんが祭り以外は全部こんな調子だったのだ。今では考えられない上映スケジュールだが、とにかく客を集めようと躍起になっている東映の創意工夫が分かって何とも面白い。私はこんな東映が好きだ。

 話がそっちの方にずれたが、本作を観ていて一つ気になったのが、再生怪人達の行方。画面を見る限りでは、全部倒されていないような気がするのだ。いろいろ戦ってたのは分かるんだが、蝙蝠男とかイソギンチャックとの戦闘シーンが無かったような気がする。それでもダブルライダーは一応「これで全部倒したな」「いや、ザンジオーがいないぞ」というやりとりを交わしているので、画面には映っていないが倒したことになっているようだ。

 しかしこれは演出上仕方が無いだろう。全部倒すシーンを描こうとすると尺が長くなるので、上手く収めるには戦闘シーンを省くか、敵が逃げるか、はたまたいっぺんに死ぬか、ということになってしまう。最初の2つは良いが最後の手段をとるとなると、とにかくヒーローがトンでもなく無敵なのか、あるいは再生怪人が全部弱っちいことになってしまう。実際他のヒーローの劇場版では、主人公がボカスカ敵を倒しまくって怪人達はあっけなく爆発してしまうシーンもある。今から観ると「おいおい」という感じだが、まあそうせざるを得なかったのだろう。

 いろいろ書いたが、やはりヒーローがTVではなく劇場の大画面で観られるというのは子供たちにとっては嬉しいものだろう。TVと映画という2つのメディアが存在し続ける限りは「劇場版」もまた不滅なのである。これからどんなTVヒーローが登場しどんな劇場版が作られるのか、見守っていこうと思う。

(評価:★3)

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