[コメント] 青い夢の女(2000/独=仏)
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全編通してベネックス・ブルーに彩られた映像。この淡いブルーが魅惑の世界を引き出している。青い色調の中には、赤い靴下や黄色いポルシェ、青のハイヒールなど細かなディティールにまで色に対するこだわりが感じられ、一部ベネックス本人によって描かれた絵画など美術も細かなところまでしっかり作られてる。ジャン=ジャック・ベネックスの復活作は、彼のこだわりが細部まで行き届き、表現された映像世界は素晴らしいの一言。雪の光が降り注ぐシーン、全面青のフロアに真紅のカーテンの幻想的な部屋など、独特の映像世界に完全に酔いしれた。この映像をそのまま絵画にして部屋に飾りたいぐらいだ。
内容的にはサスペンスとしても見られ、ブラック・コメディとしても見られ、精神分析を扱った映画として深く考えることもでき、ラブ・ストーリーとしても見ることが出来ると思う。自分は主軸をサスペンスに置いて見たが、他の要素もプラスして飽きずに見ることが出来た。サスペンスとしては必ずどこかに謎めいた部分が存在し、展開から目を離せない。その中で、ソファの下に隠した死体の手だけが何度も出てきてしまったり、死体を運びつつ氷に足を滑らせたり、墓石の中に転落したり、といったユーモアが小技として利いている。そのユーモアを違和感無く演じているのがジャン=ユーグ・アングラードというのがまた面白い。顔的にも真面目なのに少し惚けた感じが良く出ていた。精神分析については、この映画の原題にある「転移」という言葉がキーワードとなり、幼少のトラウマからこの事件を通して徐々に自分自身を再発見していく。そして、ラストシーンを見るとこの映画は実はラブ・ストーリーなんだと思った。一連の事件を通して自分を見つめ直し、そして新たに前へ踏み出し、元々心を寄せた女性との寄りを戻す。橋の上でのキスシーンのバックには美しく輝いたエッフェル塔がそびえ立ち、美術的にも美しく爽やかな終わりで好きだ。怪しい雰囲気が続く映画だが、最終的には前向きな映画に感じられた。女性の裸体の絵が陰部から引いて映し出されるオープニングとエンドクレジットも面白い。
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