[コメント] 路地へ 中上健次の残したフィルム(2000/日)
ストローブ=ユイレの方法論による延々たるドライブの車窓と延々たる現場での朗読他。狭義には中上建次の路地の記録だが、どの地方も金太郎飴のような開発がされ続けたのだもの、広義には本邦の味気ない区画整理事業全てへの批評だ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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昔は田舎にも人がたくさんいて、沼地埋め立てた入り組んだ路地に犇めいたのに、それが区画整理で味気のない町に直されるのと並行するように、人がいなくなり過疎地になる。新宮の路地記録だけでなく、全国判で押したような同じ凋落の典型例を見る思いがする。市を東西に分けていた河川も埋め立てた由。東京と変わらないことしている。
後半に、新宮市の地区改良事業(78-81年)で撤去された「路地」に関する中上自身の16ミリフィルムが映され、これがとてもいい。中上文学の基礎資料になっているのだろう。アッパッパの婆さんとか自転車に乗る女の子に詩情がある。曲がりくねった細い道、石造りの井戸。それは特別なものではなく、私の海のある田舎町を想起させるものだった。
序盤のドライブは、遠くにある紀州という距離感を生んでいる。車停めたと思ったら煙草買いに行っただけという件で小さな笑いを取っている。体育館での盆踊りも間抜けなユーモアがある。井土紀州も紀州の出身とのことで、当地の方言で朗読される中上作品に味があった。和楽器の前衛音楽など挟むのもオリジナリティ。俗謡は感じが良いのだが終盤のメロウな劇伴は軟弱で違和感あり。こういうのは詰めが甘いと思う。
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