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[コメント] タワーリング・インフェルノ(1974/米)

これぞハリウッド映画!といった感のある大作エンタテインメント。豪華俳優陣はもちろんのこと、使用される水の量も爆薬の量もすべてがケタ違い。
田邉 晴彦

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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アクションシークエンスに専属の監督と撮影主任を起用していることもあり、上映時間の長さに関わらず、終始ハラハラドキドキを持続させる要素は備えている。

また、本作のようなグランドホテル形式の作品は、限られた時間の中で各々のキャラクターをどこまで深みをもって描けるかが成否のカギとなるが、スターリング・シリファントの脚本によって一定の成功を収めている。

特に、主役の一人であるスティーブ・マックイーンの登場シーンを映画開始から40分を経過したあたりに置いたことが最大のファインプレー。これによって、ポール・ニューマンを中心としたタワー関係者についてそれぞれの個性と相関図をじっくりとセットアップすることができるだけでなく、対立軸となる外側の人間(マックイーン)の登場それ自体が物語が本格的に前に転がし始める切欠となっている。

ちなみに、一般的なパニック映画の作劇法を例にとれば、前半30分程度のところに視覚的に派手なターニングポイントを設定するものだ。『インディペンデンス・デイ』では宇宙人の攻撃によりビルが爆発する、『SUPER8』では映画の撮影をしているところで列車が脱線事故を起こす、等。これ自体は定石の手法であり、何ら悪いことではない。

しかし、本作では冒頭の段階では特に大きな出来事を起こさない。ボヤというレベルの火事がいくつか発生するだけだ。これが上映時間がすすむにつれて大火災につながっていくわけだが、この「延焼」という現象自体が登場人物たちの傲慢によって引き出された「人災」であり、本作のテーマと非常にリンクした演出である。狙いすました展開なのだ。

しかし、このままでは冒頭の盛り上がりに欠ける。冒頭の盛り上がりに欠けるエンタテインメント作品は最後まで観客の心をとらえることはできない。

そのため冒頭の段階では特に大きな事件を起こせないというジレンマを逆手にとり、スティーブ・マックイーンという「大スターの登場シーン」そのものをドラマ上のターニングポイントの一つとして活用している。これのおかげで観客も心のギアを一つ上げることができる。実にうまい脚本だと思う。

ただし、耳が聞こえない母親とヘッドフォンをした息子を登場させたのは、作品内の出来事を前提にしたあまりにもご都合主義な設定だ。世界一の高層ビルを建てたいという自己顕示欲まるだしの施工主、コストダウンを下請け業者に押し付ける弱者いびりの中間管理職、追いつめられた挙句安全性を顧みない改悪を行う現場の責任者、それを見抜けなかった正義感溢れる設計者、といった具合に、非常に人間らしい傲慢さにまみれた実在感あるキャラクターが揃っているだけに、この親子の存在が作品世界から完全に浮いてしまっている。

また、今見るとマチズモが過ぎるきらいがある。すべての女が一様に男への依存でなりたっている上、実際的な機能は何一つ期待されていない。セックスの対象であり、男が男であることに酔うための道具に過ぎない。それならば、その際立ったビジュアルとフィルモグラフィーから否が応にも芯の強さを感じさせるフェイ・ダナウェイはミスキャスティングではないだろうか。

さらに言えば、テーマははっきりと弱い。同じ製作チームによって本作に先駆けて公開された『ポセイドン・アドベンチャー』が単なる大作エンタテインメントという枠組みに収まることなく、「自助主義」の何たるかを通じて「信仰」「宗教」という問題に踏み込んでいたのに対して本作は映画の最後にポール・ニューマンの口から直接的にテーマを語らせてしまっている。手に負えないものを作ろうとする人間の傲慢さ愚かさを中傷してはいるが、『ポセイドン・アドベンチャー』に比べれば矮小化された通り一遍のテーマに過ぎない。

以上のような観点から、僕個人の感想としては…、過去の遺産という域を出ず、この先も語り継がれ観続けるられる作品とは言えない、である。

(補記1) ちなみに、スティーブ・マックイーンとポール・ニューマンという当時の二大スター競演が話題になったとのことだが、この二人が『明日に向かって撃て』を共同製作しようとしていた事実を知る。たしかに本作の二人の競演は非常に見ごたえがあるが、ブッチとサンダンスはやはり、ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードで正解だった。

(評価:★3)

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