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[コメント] 光の旅人 KーPAX(2001/米=独)

細かな欠点の揚げ足を取ると正直尽きないが、ここで描かれたヒューマンドラマにはどこか優しさを感じた。「バナナ皮ごと食ってるよ!」とかバカにする映画ではないです。
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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 冒頭、光の中からケビン・スペイシー扮する自称K-PAX星人、プロートが登場。あまりにもワザとらしい演出で気が引けたが、その後ジェフ・ブリッジス扮する精神科医マークと出会ってからは、発想の面白さに惹かれた。プロートが豪快にバナナを皮ごと平らげ、出身のK-PAX星にについて詳しく語る。おかしな発想に違いないが、生殖行為はいやいや仕方なくやっているなど、なかなか興味を引く会話を繰り広げる。人類に対するアイロニー的な発言が多いのも面白い要因だろう。

 中盤、琴座付近の星図を描く辺りまでは、周りの人物描写が大雑把であるとはいえ、予想以上に好きな感じだった。だが、途中からK-PAXの謎解明の方向へ話が傾きだすと前半の良さが激減した。雰囲気はそのままに中途半端に謎解きを挿入したので、うまく入り込めず。あまり適切な展開だったとは言えない。それに加え、味を出していたケビン・スペイシーだが、催眠療法の際に見せた演技はさすがに過剰で気に障る。前半のような少し抑えたユーモアありの不思議な感じの方が良い。だが、謎が解かれK-PAXについての事実が明らかになってからは、(その後も結構時間を使って描いているし)盛り返したように見える。

 プロートは実際のところ、以前に家族が殺害され、その反動で犯人を殺してしまった一連の事件を受けて悲しみを持った"人間"だろう。だが、彼自身が自分はK-PAX星人であると言い張ることにウソは存在しないと思う。事実は事実として存在するのだが、ショックから生まれた妄想により、プロートにとっては自分にも他人にもありのままを表現しているのだと思う。非常にかわいそうな存在である。自分はプロートがK-PAX星人であると信じてあげたい。人々に優しさと癒しを与えたことは確かだと思う。エンドクレジット後、マークが庭で天体望遠鏡を眺め、微笑むシーンが挿入されているが、それ故に印象的な挿入ラストに感じた。

 このように終盤の解釈自体は悪くないと思った。衝撃を狙ったような素振りもなく自然な流れで受け止められた。だが個人的には、周りの人物たちの描写が甘いので一人だけ連れて行くという方法は失敗だったと思うし、消えてしまったのは蛇足に思える。上にも書いたように自分はK-PAXを信じたい人間なのだが、本当に消えてしまう直接的な効果は、他の表現が間接的であるので適当ではなく思えた。

 全体的に見て雰囲気やストーリー自体は悪くないだろう。だが、演出も少しあからさま過ぎるし、蛇足な部分も見当たる。上にも自分から見た欠点も述べたが、題材は面白いし、ストーリーも悪くないので、見せ方を変えたりと修正すれば、改善されてもう少し良くなっただろうに・・・。これだけ欠点を出しておいて★4もつけてるのは、見終わった後の印象は良いものであったから。地味ながら優しい雰囲気に呑まれました。前にも述べたが、クレジット後の挿入シーンは映画の内容も良く表しているし、意味が大きかったと思う。 

(評価:★4)

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