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[コメント] KT(2002/日=韓国)

いずれも真犯人は同じなのだが、ポン・ジュノは『グエムル』で奴等を描き、阪本は本作で描かなかった。映画に込める熱量の違いがこのスタンスに端的に現れているように見えてしまう。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







アメリカの掌で踊らされるKCIAと自衛隊を描く訳だ。アメリカの掌返しで殺害されなかった金大中。真犯人は出てこず、映画全体は生煮えの印象で終わる。それは当然だろう。それが狙いなんだろう。しかしそれを狙ってどうだと云うのか。全然面白くない。具体的にアメリカを描くべきではないのか。せめて『グエムル』程度には。

三島に共感するファナティックな自衛官佐藤浩市が語る「俺の戦争なんだよ」。「負けた」「勝たなくっていい戦争もあるよ」で暗殺されて終わる。この三島思想にも穿ったものが何もなく、観ているうちは面白い処もあるが、娯楽作を超えるものはない。原田芳雄の新聞記者との対決は出涸らし感。

金大中の講演が二度出てくるが、この内容に人の心を掴むものが何もないのが、本作のスタンスを表しているのだろう。救おうとした北朝鮮の恋人ヤン・ウニョン、在日コリアン筒井道隆の親子についても、肯定的なものを何も示せなかった。ならばシニカルな世界を批評しようとしたのかというと、それほどの腕力もない。ひと通り撮り終えてもう限界ですとヘタった陸上選手みたいな映画。このテーマでいったい何が撮りたかったのか、さっぱり判らなかった。

考証については、韓国に詳しい四方田犬彦が本作を大いに批判しており(「日本映画と戦後の神話」収録)とても興味深い(本作スタッフにも云い分があるのだろうけど)。序盤のウニョンのアパート見張る二階からのキャメラは面白く、町中の70年代再現も愉しめた。劇中映画は『広島死闘編』と、中川梨絵は『(秘)女郎責め地獄』か。これら73年の秀作に映画は勝負を挑んだ具合だが、どうしようもなく負けている。

(評価:★2)

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