[コメント] カタクリ家の幸福(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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紙飛行機を持って顔の斜め上のほうでチョンチョンとやる仕草なんか素敵だ。あの美貌の持ち主で、ああいう人であるというのは「可愛くてヘン」なオンナのコが好きな男にはたまらないでしょうね。彼女の「はずし方」は、あざとい感じに「一歩間違わず」なっていない、と私は思うのだけど、人によっては鼻につくと感じるかも知れない。どこまで「くだけるか」「ゆるくやるか」、「バカやってます」という感じをどのくらい醸し出すか、あるいはまったくシャットアウトするか?まだ彼女の中では試行錯誤中なような気がする。そこへ行くと松坂慶子は迷いがないという感じ。沢田研二に「あなたは優しいから好かれるんですよ」とか言って、満足そうな笑顔を浮かべ、観ているこっちをすごく幸せな気分にさせてくれるようなシーンと、バカをやるシーンとが矛盾無くつながっている。ちゃんと一貫している感じがする。沢田研二も同様。筋の通ったエンターティナーだから、シリアスでもバカでも「楽しませることでは同じ」という悟りがあるのでしょう。2人のパジャマ姿のしまらない中年体型は、役作りなのか素なのかわからないけどプロだなあと感心した(それでいてデュエットシーンでは本来の華やかさも見せるしなあ)。
しかしながら、悟りといえば、何と言っても丹波哲郎が一番凄かった。役柄を、というかこの作品の基調というものを完全に掴んでいるとしかいいようがない。結果的にそうなっただけなのかも知れないが、完璧にアジャストしている。俳優に授けられる賞というものが「その演じられた人物を本当にそうであるとしか思えないほど完璧に現出させてしまった」演技力(素も含めて)に対し授けられるのだとしたら、まさにこれこそ良い例だ。ぜひ助演男優賞を。ラストで「生の喜び」と「死の予兆」を一瞬で切り返してみせるところなど、この人は本当に霊界に行って人間の何たるかを見極めてしまったんじゃないだろうか?とうっかり思ってしまった。
この話、演出家にとっては、ペンションを訪れる客達が次々ああなるという設定上の面白さに依って作品を練り上げたくなるのが普通だと思うが、それをほとんど無視し、役者の演技に面白さのポイントを置いたところに監督のセンスを感じた。
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