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[コメント] 積木の箱(1968/日)

川のある風景をいくつか繋いで大きな家のショット。食事をする家族を、窓外から窃視するかのようなマスターショットがあり、カメラが家の中に入る。家族の科白はとても説明的。おかげで場所は旭川と分かる。北海道内を点々として来たらしい。
ゑぎ

 彼らを紹介しておこう。父母は内田朝雄荒木道子。その子らは3人で、上から松尾嘉代−ナミエ、梓英子−ミドリ、内田喜郎−一郎だ。ミドリは高校生で一郎は中学生。梓英子がうまく子供っぽさを作っている。この食事シーンは、食卓の背後の様々な場所にカメラを置いて撮って繋ぐ。松尾と梓の会話をドンデン(180度のカメラ位置転換)で見せるのが目に留まる。彼らに絡む配役として、一郎のクラスメイトの百合−南美川洋子がいる。そして、学校の近くで牛乳屋(というかパン屋というか煙草屋というか)をやっている、小さな男の子のいるシングルマザーの若尾文子−ヒサヨと、一郎の担任の教師−緒形拳。クレジットは最初に若尾と緒形が一枚に出るが、しかし、プロット構成上は一郎−内田が完全に主人公だ。プロットの転機は上記のトップシーンの後早々に(まだアバンタイトル中に)訪れる。父の部屋から嬌声を聞いた一郎が、窓から父とナミエ姉さん−松尾とのセックスシーンを見てしまうのだ。この光景は一郎のトラウマのようになって、以降何度もフラッシュバックする。

 さて、こゝからはプロットには極力触れずに、特筆すべきと思うことを書いておきます。まずは、セクシーな4人の女優について。勿論4人とは、若尾、松尾、梓、南美川のことだ(残念ながら荒木は除外)。この中で最も出番が多く、肌の露出も多いのが、松尾だ。松尾は父と寝るだけでなく、弟の一郎も、その先生の緒形をも誘惑する役だ。次のセクシー担当(2番手)は梓だろう。梓も緒形の前でストッキングを脱ぎ、彼の膝に自分の脚を乗せるといった場面がある。じゃ、若尾はどうなんだと問われると、若尾はいつもと違って、本作の良心を担っている役で、乱れたりしないのだ。ただし、ある人物から無理やり犯されるシーンがある、ということは書いておこう。このシーンでは、メチャクチャ胸を揉まれるということも付言しておく。また、南美川は中学生役なのだから、そんなにムチャな演出はつけられていないけれど、スクール水着姿のシーンがあるというのはポイントかも知れない。

 そして、増村の演出基調について、本作でもツーショット、スリーショットを多用して、180度のカメラ位置転換で軸線(会話軸、イマジナリーライン)を越えて繋ぐカッティングが何度も出て来る。また、人物の科白回しは矢張り、キッパリとした強い口調だ。これらにより、非常に強いショット、シーンを造型する。この口調、口跡に関して、最も増村らしさを体現しているのが、意外にも、梓英子だということも特筆したい。それと、最も変態的なシーンは、リクライニングシートに寝そべった松尾と犬(大きなコリー犬)との絡みのシーンだろう。これにはニヤケてしまいました。犬の表情もいい。

(評価:★3)

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