[コメント] 魅せられて(1996/英=米=仏=伊)
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実は観てなかったんです。ベルトルッチ、あんまり好きじゃないですよ。でも、「東洋三部作」とやらの御大層な大作が続いたベルトルッチが久々イタリアに戻って撮った作品で、「肩の力が抜けた佳作で案外いいんだよ」って噂を聞いてはいたんです。お噂はかねがね。そしたら「永遠女優 甦る青春のアイドルたち <1980-90年代編>」という企画で上映されていたので2022年に初鑑賞。
こんな企画なもんだから、映画館の観客も中年オジサンばっかりですよ。「いい年こいたオジサン達が若い娘にはしゃいじゃって、いい加減にしなさいよ」と思っていたら、まさかの映画自体がそういう内容だったんでビックリした。
これは、リヴ・タイラーを観察する映画です。冒頭から、リヴ・タイラーの隠し撮りで始まりますしね。彫刻家のオジ様も「俺が観察する」的なことを言いますし、なんだかワカラン同居人たちの話題の的ですし。リヴ・タイラーは異国の地で父親を探すので周囲を「観察する」のですが、同時に周囲から「観察される」という作りの映画です。
おそらく、リヴ・タイラーを芸術の女神(ミューズ)に見立てているのでしょう。
彫刻家は彼女のおかげで創作意欲がわきます。白血病のジェレミー・アイアンズは(元劇作家とか言ってなかったっけ?)彼女に(最後の)恋をしたのでしょう。そして何より、監督のベルナルド・ベルトルッチがリヴ・タイラーに『魅せられて』いるのが分かります。いい年こいたオジサン達が若い娘にはしゃいじゃって、いい加減にしなさいよ。
そういった意味では結構「私小説」的なんですよ。実際、リヴ・タイラーも本当に実の父親と育ての父親が違うそうですしね。そしてベルトルッチの「創作意欲」は彫刻家に投影され、「(果たされない)恋心」はジェレミー・アイアンズに投影されたのです。こんな美人でピチピチした19歳処女が娘だったらいいな、彼女だったらもっといいな、という監督の想い。ベルナルド・ベルトルッチ(当時55歳)、いい加減にしなさいよ。あ、今の俺の年齢だ。
そうした儚いオジサンの想いを込めた映画だと思っていたら、最後に大逆転劇が起きるんですね。ついにリヴ・タイラーをものにする純朴青年。「俺らこんな村いやだ。アメリカさ出るだ」。お前もベルトルッチの分身じゃねーか!いい加減にしろよ!
(2022.09.25 シネ・リーブル池袋にて鑑賞)
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