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[コメント] I am Sam アイ・アム・サム(2001/米)

そう。君は君なんだよ、サム。 君の歩幅でゆっくり歩いていけばいい。
琥珀

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず最初に気になったのが、何故ビートズに絡んだ話が多いのかということ。 名前からしてそう。娘ルーシーや弁護士リタ・ハリソンの名前。 名前だけではない。横断歩道を並んで横に歩くシーンは「アビィ・ロード」、 おまけに前編に流れる挿入歌は全てビートルズ。しかもカバー!? 否定しているのかと思われたらその逆、これが意外なほどピタリとはまっていた。

監督であるジェシー・ネルソンは、この映画を綿密なリサーチのもと作り上げたと語っている。 施設の障害者に「好きな曲は?」とアンケートを募り、 複数の人がビートルズと答える姿がDVDメイキングの中残されている。 劇中にも実際の障害者の方が2人、サムの友人という重要な役柄を演じている。 いや演じているのではない。そのままの姿なのだ。彼らの動作やセリフが アドリブだとあとで知り、ショーン・ペンがいかに順応性に長けた役者かが分かる。 役柄そのままにアドリブで返答しているのだ。彼なしではこの映画の成功はなかった。

ショーン・ペンと娘ルーシー。 この2人が主人公には違いないのだけど、あともう1人別の主役がいる。 女性やり手弁護士、リタを演じたミシェル・ファイファーだ。 彼女は辣腕弁護士としての名声はあるが、陰では金にがめつく冷たい女と囁かれている。 本人もそのことを知っている。自らのイメージアップを図るため、 サムの弁護を無料奉仕で受けた経緯がある。

その氷の心を持つリタが泣き崩れるシーンは圧巻。 純粋無垢、少年のようなサムの前で、全ての殻を破って泣き崩れるのだ。

「夫には浮気され、息子にも汚い言葉で罵ってしまう。道行く大人が立派に見える。 うまくやらなきゃと毎日気を張って生きている。わたしはなんて駄目な人間なの!」

リタは自分を保つことでギリギリの生活をしていたのだ。 完璧な人間などいないのに、彼女は完璧を演じていた。 内面に味わう苦い挫折感を、態度にはおくびにも出さず。

本題に入る。 「7歳児の知能しかない父親に、娘が育てられるのか?」 至極当然な疑問。果たしてサムは親権を獲得できるのだろうか。 結末は自身の目で確かめて欲しい。“愛こそすべて”、素晴らしい結末が待っている。 里親を演じたローラ・ダーンの慈悲深い表情も忘れられない。

「I am Sam」「僕はサムだ」「僕は僕なんだ」

そう。 君は君なんだよ、サム。 君の歩幅でゆっくり歩いていけばいい。

(評価:★4)

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