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[コメント] マイノリティ・リポート(2002/米)

役者に監督が引っ張られるというのは好きじゃない。スピルバーグというよりもトム・クルーズの映画だった。
chokobo

原案を一気に飛躍させて、神学的な世界へ突入したスピルバーグを見た。

実は前作A.Iでも同様の哲学概念に挑戦している。それは映像にはまるで表れてこないのだが、明らかにスピルバーグは宗教的な世界を囲い込もうと努力しているのだ。

しかし本作ではむしろトム・クルーズというかつてない個性が全面に押し出されることによって、全くスピルバーグらしさを失ってしまっている。

細かい配慮は相変わらず見事。カラー映画とは思えない色の落とし方。グレーを中心とする映像は時折モノクロか?と思えるような映像感覚。タルコフスキーの『ストーカー』を意識して…とまでは言わないが、これまでギンギンだった画面いっぱいのカラーは見事に枯れ、落ち着いた色彩感覚を与えてくれる。

ストーリーは単純で新鮮味もないし、サスペンスとしても二流だ。マックス・フォン・シドーの役回りも物語の中盤でばればれである。後半、真実に近づく過程で妻が協力するという展開も視点がぶれているように思える。

つまり、お話はどうでも良いということだ。スピルバーグの近年の作品はエンターテインメント性を落とし、哲学的、宗教的にスパイラルしているのだ。

それでも見てしまう、というところにスピルバーグのすごさが隠されているのであろうか?

(評価:★3)

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