[コメント] ハリー・ポッターと秘密の部屋(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
私は映画が好きである。基準云々は別としてやはり「好き嫌い」と「良し悪し」は別に考えるし、映画は人の人生を変える力すら持っていると思っている。
だが一方でこれは「ビジネス」である。映像表現の極みを目指して作られる作品もあれば「儲ける」ことを目的に作られる作品もある。もちろん一定のライン(それがどこかは別として)を超えなければ、なかなか儲けることは難しいが、それでも当たれば「成功」である。
その意味において、この作品をアイドル映画と比較するのは極めて面白い。
両者に共通しているのは「誰に」「何を観せるのか」が極めてシンプルに設定されている―という点だ。前述のように、このシリーズは極めて短期間に世界中で読まれた作品だ。原作を読んだ観客はまだ読後感冷めやらず、従ってストーリーの展開に意外性を感じることはない。ここで「誰に」「何を」というミッションは2つの選択肢を持つことになる。すなわち・原作を読んでいない観客に「お話」を観せるか、・原作を読んだ観客に「映像」を観せるか―である。
このシリーズは「お話」をとらずに「映像」を取った。それは前作にも言えるが2作目に特に顕著だ。まだ原作を読んだことのない観客をその「お話」の世界に引き込もうとしているのではなく、すでに原作を読んでいる観客に向かって「映像化」してみせることを選んだのだ。故に、例え展開が分かりにくくなったとしても、ひとつでも多くのエピソードを「映像化」することにこだわり、「秘密の部屋」を出てからも話は延々と原作をトレスし続けるのだ。
そのことで原作を読んだ観客は「映画」ではなく、「ハリーポッター」という作品にロイヤルティを持ち、さらに次の作品を心待ちにするようになる。このロイヤルティは、原作を読んでいない読者にくらべ極めて強いものだ。
この作品は「原作を読んでいる観客」をそのターゲットとして選んでいる。この観客はカスタマーであり、原作未読の観客はコンシューマーなのだ。
私はすでに原作を読んでいる。確かに面白いが、正直この程度の面白さなら他に名作はいくらでもある。だが、映画は楽しめた。それは「良い、悪い」でも「好き、嫌い」でもなく、ましてや作り手の都合でいじくりまわしたものではなく、私の読んだものをそのまま形にしたものだったからだ。
まずビジネスの部分からしっかりとした骨組みをつくり、その上でていねいに肉付けをする。大量のスーパーバイザーのもと、衣装にも小道具にも細心の注意を払い、前作からわずか1年で続編を公開する。そのプロデュース力は驚嘆に値する。
素晴らしい。
ビッグビジネスとしての映画興行。これも間違いなく映画の持つ魅力のひとつなのだ。
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