一年前のクリスマス。「指輪が欲しいぃ。欲しいぃ」ってんで買ってやった。

一年後、クリスマスプレゼント何がいい？去年は指輪だったよね、とウッカリ口をすべらせた。

「なにそれ？あたし指輪なんか買ってもらってないわよ」

しまったぁぁぁ！別の女だったぁぁぁ！

いいかい？エルフだか魔術師だかいう超人諸君よ。人間てのはなあ、本当にうろたえると血の気が引くのが自分でも分かるもんなんだよ。

自分の中のもう一人の自分が囁く。

「しらばっくれろ。しらばっくれるんだよ」

「で、でもぉ」

「いいからシラを切れ。そうしないと戦争が起きるぞ」

「でもいい子だよ。彼女いい子だよ。騙すなんてできないよ」

「愛しいものを守りたかったら、騙し続けろ」

「うるさい。もう言うな。お前あっちいけ」

「女なんてのはなあ、いつか必ず裏切るんだよ。お前は裏切られるんだよ。裏切られて捨てられるんだよ！」

「ていうか、悪いの俺じゃねえ？」

指輪が悪い心を起こさせたのか、悪い心が指輪を買わせたのか、いつの時代も指輪は災いの源。遠い遠い昔のお話し。

ま、幸い、指輪（もしくはピアス、イヤリング）を部屋に忘れられて、それを捨てる旅に出たことはないんですけどね。

注

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体や、俺がハゲはじめてゴラムに近づきはじめてるんじゃないか等とは一切関係ありません。