[コメント] ロード・トゥ・パーディション(2002/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
トム・ハンクスの演技に巧さを感じる人がいるかもしれない。残念ながら私には、あのちょびヒゲとともに終始一貫しっくり来なかった。
彼の演技から「親をなくしてマフィアのボスに拾われた境遇」や「裏社会を生きるものの暗さ、苦しみ」や、その逆の「裏社会を生きるものの虚栄心」「死に直面した狂気もしくは極度の精神的抑圧」など、紋切り型ではあるが「ヤクザ」的な、不遇な環境に置かれた心象風景を垣間見ることはできなかった。 彼はいつもの彼であったし、いつもながらに岩窟王的な「いいひと」だった。上っ面だけの復讐心、苦悩、プライドが透けて見えるような気がして、作品世界に共鳴できなかった。
作品世界に共鳴できなかったもう一つの理由は、どん底の「銃社会」アメリカで、こんな作品を作る意味がまったくわからなかったことだ。
これが果たして銃社会へのアンチテーゼなのだろうか?私にはまったく理解できない。なぜこんなにまで美化し、カッコよく作ろうとするのか?劇中の個人を美化するのは良いとしても、舞台や設定そのものを美化しているかのような表現は稚拙に思えてならない。
暴力や死が刺激的であり美しいものである、という考えはわかる。であるからこそ、余計な演出は不要なのだ。スローモーション、写真撮影、降りしきる雨・・・。何度私をうんざりさせれば気が済むのだろうか?
映画を見て何を感じるかはそれぞれの感性であるし、自由である。
ただ「ヤクザ映画」をこんなに堂々と、全世界ロードショー・大人も子供も見てね・感動するよ、などと広めていいのだろうか? 『仁義なき戦い』のように、おどろおどろしいタイトルバックや音楽で「女子供にゃちょっと近づけない」雰囲気を作るべきだろうと思う。
私は、この作品がいくら「親子の愛のストーリー」だの何だのとカモフラージュしても、ヤクザ映画はヤクザ映画。ならず者の人殺しの物語であることを忘れない。味付けでごまかした化学調味料いっぱいのハンバーガーだ。
この映画に限ったことではない。しかし、こうした映画が出来る背景こそが、誤ったアメリカ社会の縮図ではないかとさえ思う。
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