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[コメント] ジョンQ 最後の決断(2002/米)

キャスティングの豪華さと、俳優個々の巧みな演技で引っ張られる。エンディングで急激に丸め込まれる感じはするが、素直に楽しむべきなのかなと思う。しかしアメリカってのは弱者に厳しい国だね。
サイモン64

いつもはインテリっぽい風貌のデンゼル・ワシントンが、今回は突如ホーマー・シンプソン風の、ケツのでかいアメリカンなおとっつあんを演じる。

子供が心臓移植を要する重病だと判明したけど、何千万もする心臓移植の手術代なんて払えないし、大体入院費からしてかなりやばい。ろくな仕事にありつけなくて金もないし、保険会社は民営でコストダウンに走って満足に医療も受けられないし、嫁はガーガーうるさいし、で、どうするかと言えば、もうこうするしかないでしょ的に病院ジャックに及ぶ顛末が簡潔ながら明確に描かれる。そして交渉人的警官登場から最後に至るまで、結構先が読めてしまうものの、キャスティングと俳優個々の演技力で最後まで引っ張ってくれる。

この裏には堤未果の著書「ルポ 貧困大国アメリカ」にも書かれているような、弱者切り捨ての実態があるわけだ。2008年現在44才の私からすると、アメリカというのは国民全員が豊かな消費社会だというイメージがあるのだが、ニューオリンズをハリケーンが襲った後に目にしたアノ貧者達は、思いこみとは全く逆の世界を見せてくれた。2008年のサブプライムローンに端を発する米国の経済崩壊で、今後さらに進むだろう弱者切り捨てがどんな結果を産むのか、本当に注意して見なければいけないと思っている。

横道にそれてしまったけど、追い込まれた主人公が暴走して突如始まった籠城劇は、犯人、家族、人質、警察、警察のバカ上司、群衆、そしてマスゴミと、パターン的な駒を使って描かれていくものの、個々の俳優の演技力が高くてキャスティングも見事なため、古さを感じさせない作りになっている。

さすがに終盤のご都合主義的展開は、強引に丸め込まれた感がぬぐえないが、かといって娯楽作品で他の終わり方も無いだろうと感じる。

このあたりはひねくれずに、素直に楽しんでみた方が良いのだろうなと思った。

(評価:★4)

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