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[コメント] HERO(2002/中国=香港)

マギー・チャンがいい。衣が風になびく様と視線がばっちり決まっていた。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







あと、残剣と無名の「意識の中」での水上対決に見惚れた。水しぶきが飛雪にかかったところで急に対決は終わりましたが、あれは、「実の世界」で、残剣が飛雪に涙を落とし、無名も泣いていたということを示しているように思われた。こう考えると2人が剣先で水面を飛び跳ねるシーンは、落ちる涙を表現しているようでもあるし、無名の水上回転は涙をぬぐっている様を表現しているようでもある。始皇帝によりこのシーンが無名の作り話と見破られはするものの、なんとも漢詩的表現で、このシーケンスは素晴らしいと思った。

気になるのは、軍隊の描写。弓(物量)に頼りすぎた感がある。始皇帝を除いて、個人ではなく、あくまで集団としてでしか秦国を捉えていなかった。軍隊・官僚の台詞がそれぞれ完全に揃っていたように、刺客とそれに向き合う始皇帝の個性(孤独)を際立たせる為に、意識してそのようにしたのだろうが、その効果を認めつつも、物足りなさが残るのも正直な気持ち。

もう一つ、細かい点だけど、無名が謁見に向かう冒頭では、広場が埋め尽くされるほどの軍隊がいたのが、ラストでは少数になったのも気になる。謁見が終わらないうちに、多くの軍隊が退散してしまうのは不自然。ラストで弓を射る間を設ける為にどかしたようでもある。人物にCGを使わなかったこともこだわりにしてるようだけど、(黒澤監督の影武者・乱とまでは言わないまでも、)歴史ものではそういうところにもっとこだわりを持ってほしい。

本作は、漢詩の世界を表現した映画だと思う。正直、本作にアクションを全く期待していなかった。全体として、歴史ものとしての深みには不満は残るものの、映像表現には十分満足できた。

天下・・・。あの始皇帝と残剣の思想は、信長の「天下布武」に近いと思う。同じように、「国の統一」=「天下」として、「天下」を称する国は、実はアジアでは中国と日本しかない(理由は他のアジア諸国にとって、歴史的に天下は中国になるから。これがアジア全体の大ヒットにつながった大きな要因だと思う。独自の「天下」観を持つ日本ではさほどまでにはヒットしないと想像する。)日本版のHEROも観たいと思った。

(評価:★3)

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