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[コメント] 明治侠客伝 三代目襲名(1965/日)

藤山寛美のユーモラスで粋な造形は鈴木則文のいい処が出ているのだろう。彼なかりせば見処少ない。
寒山拾得

鶴田浩二は優等生過ぎて窮屈だし、藤純子は美人なだけ、安部徹は悪役というだけ、他もそんなものだ。組を堅気にするんだと宣誓する鶴田を丹波哲郎が「偉いっ」などと膝を打って絶賛する辺りの空々しさは何なのだろう。善悪が余りに明快、類型的人物たちの骨組みが並んでいるだけにしか見えない。

では表層が面白いかと云えばそれほどでもない。冒頭のアラカン刺殺未遂がシュールなのは背景セットがないからであり(日程的にセットが組めなかっただけらしい)、日活ロマンポルノみたいだ。セットは唯一、鶴田・藤の逢引きのセットに力が入っているけど、藤が歩くと床がギシギシと張りぼての音を立てているのが痛々しい。

内田吐夢の重厚な美術撮影を東映は提供できていない。プログラムピクチャーは吐夢と並べて語ってはいけないのだろう。予算も時間もなく、それでも撮ってやるぜという活動屋の意地を見るべき映画なのだろう。ベストショットは藤が帰省する際のバスを遠景に、荒地を近景に捉えたローアングルのショットで、こういう断片には才覚が溢れている。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ジェリー

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