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[コメント] 至福のとき(2001/中国)

東洋的な実利現実主義と西洋的な楽観理想主義が、巧みなバランス感覚で取り込まれた実に計算高い大人のおとぎ話だ。チャン・イーモウによって、観る者の思考もしくは嗜好を試すリトマス試験紙がエンディングの後に仕込まれている。つまり本編は長い前置き。
ぽんしゅう

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







一人で生きることを決意した盲目の少女は、楽器を手に見知らぬ地を巡り門付けしながら旅する流浪の民として生涯を終えるのか、あるいは街の花売り娘として過ごすうち奇跡の救世主チャップリンに出会い幸福を手にするのか。その判断は観客にゆだねられる。

そこには、チャン・イーモウのある種の良心から来る居直りともとれる判断放棄がある。それは、アメリカのメジャー資本を得て全世界公開を前提に映画を撮らなければならなかた東洋人作家としてのせめてもの矜持だったのかもしれない。

しかし、その覚悟や意志の放棄という計算が作品から説得力と迫力を奪ってしまったこともまた事実だろう。

(評価:★3)

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