[コメント] マグダレンの祈り(2002/英=アイルランド)
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痛々しく残酷なテーマだが、ヒロインたちに過度にセンチメンタルに寄り添うわけでもなく、非道な修道院を強く弾劾するわけでもなく、ありのままの現実を淡々と丁寧に描く監督の視点が非常に鋭角で、ストレートに作品が胸に突き刺さる。脚本はドラマティックな起伏があるわけでは無いが、キャラクターの違う3人のヒロインを通じ、修道院の非道な日常や生徒たちの機微が描かれていて目を離さずに最後まで釘付けにさせられる。俳優であるミュラン監督は説明的な台詞は使わずとも一瞬の表情や動き、シチュエーションで的確に心情を描写していて、巧みな才能を感じた。冒頭の少女のレイプのシーンを音楽で打ち消し、いっさい台詞は聞かせずに役者たちの表情で語らせる演出や、神父の服に蚤を忍ばせ笑いをそそった場面から急転し、その神父に犯された少女の叫び続けるシーンへの息を呑む展開は見事。彼女が人々が押し黙り見つめる中、逃げ行く神父に「あんたは堕落した神父よ」と何度も何度も叫び続ける白昼の緊迫感と悲しみの融合のシーンは観るものの胸を打つ。列挙するとキリが無いが、その少女を精神病院送りにした直後に見せる非道なシスターの僅かな人間的な自責の念を一瞬の横顔で見せたり、孤独から悪ぶってしまうバーナデットの素直さ(死者へのキスやロザリオの盗難)など些細な描写にて全て意味を持たせられる監督は非凡なセンスの持ち主。弟が迎えにきて修道院から帰宅がやっと決まったマーガレットの「こんなに簡単なのね」という一言が胸を揺さぶる。昔と今じゃ時代が違うから!と一言で片付けずに是非観てほしい作品。
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