[コメント] ドッペルゲンガー(2003/日)
野暮ったくなりがちなマルチ画面部の演出が抜群に上手く、目まいがしそうな緊張感が心地よい。今までの意味ありげでいて、実は途中で投げ出してしまっているようなスタイルを棄て、確かなテクニックで押しまくる黒沢監督の吹っ切れように好感が持てる。
こんな経験があります。
総合病院の待合ロビーでのことです。長い待ち時間に退屈し、何を見るともなくぼんやりとロビーを眺めていた私の視界の中を満面に笑みを浮かべた一人の中年男が近づいて来るのに気づきました。
「やあ〜、北島先生。こんにちは」と、その男は挨拶をしてきます。
おそらく私は「・・・(はぁ?)」という顔をしていたに違いません。私の名前は北島でもなければ、まして人から先生と呼ばれるようなことをした経験など一度もありません。
「先生。どこがお悪いんですか?」男にとって、私はやはり北島先生のようなのです。 「あの、お人違いじゃありませんか」と、私。今度は、その男が「・・・(はぁ?)」の番です。
念を押すように「北島先生・・ですよね」
「いえ、違いますが・・・」男の勢いに少したじろぎながら私。
「え〜、先生ですよね」この男しつこい。
「違います」強い口調で私。
「ううん〜!似てるなぁ〜!いやぁ〜似てる」と、男は何度も後ろを振り返りながら(と書きたくなるぐらい)不思議そうにその場を立ち去りました。詫びの言葉ひとつ残さずに。
始めはこの出来事を面白おかしく周りの人たちに話していたのですが、何度も自分で繰り返し話しているうちにだんだん気味が悪くなってきました。私とそっくりな人間が近くの町に住んでいる。先生と呼ばれる、その北島という男はどんな人間なのだろう。今、私がこうしているときに、私とそっくりな男が別の場所で別の何かをしている。もし男の家族が、私を街で見かけたら・・・。いや、私がその男を、街で見かけたら・・・・。ちょっと恐いが、一度会って見たい気もする。
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