[コメント] 縞の背広の親分衆(1961/日)
森繫は、かつて殺人を犯し、ほとぼりが冷めるまで、南米にフけていた(逃げていた)男、大島組の元幹部だ。橋を渡ってすぐの、お狸不動にお参りするが、ワニ革の鞄を3人組のチンピラに盗まれてしまう(一人は若き愛川欽也!)。という出だし。
大島組は、親分が既に亡くなり、未亡人(後妻)の淡島千景が細々と守っているが、構成員は、寺の坊主を兼業しているフランキー堺(スモーキージョーと呼ばれる)と、普段は飯屋の亭主−桂小金治ぐらいしか残っていない。縄張りは、新たに台頭してきた有島一郎の組、風月組に荒らされている、という状況だ。
冒頭、帰郷した森繁と淡島は初対面なので、森繁から仁義をきる(名乗り口上をする)のだが、これが見事な口跡で、こゝが全編で一番の見せ場かも、と思ってしまうぐらいだ。
大島組の亡くなった親分には二人の子供がおり(淡島は義母ということだが)、一人は道路公団の設計技師−田浦正巳。もう一人は家を出て銀座に花屋を開業している団令子。本作のプロットは、田浦が設計した道路の建設と、大島組がずっと大事にしてきたお狸不動の取り壊しに関する騒動をメインプロットとし、風月組や、公団幹部も絡んだ利権争いだとか、フランキー堺と団令子の恋愛、淡島と森繁のプラトニックな心持ちの昂進などが描かれる。
全体的に川島喜劇としては、イマイチ笑いどころが少ないし、変な空間を使った人物の出入りの面白さもあまり感じられない出来栄えだが、沢山の登場人物をさばく演出、という部分では、いつもながらの剛腕ぶりを示していると思う。
脇役でまず書いておきたいのが西村晃だ。風月組の客分という役だが、フランキーと二人、小金治の店の前の階段を使ったやりとりのシーンや、後半の森繁との会話シーンなど、とてもカッコ良く印象に残る。あとは、道路公団のお偉方で、沢村いき雄、内海突破、渥美清と出て来るが、渥美には全くコメディパートなしで、とても偉そうな役、というのはちょっとがっかりした。
その他、風月組のメンバーには、有島組長の息子にジェリー藤尾、幹部の堺左千夫らがおり、ジェリー藤尾がよく動いて目立つのだが、彼が笑えないコメディシーンを量産している感がある。また、フランキー堺が冒頭のチンピラ3人組を仕込もうとする訓練場面もつまらない。東京タワーや愛宕神社の階段など、良い風景を見られるシーンになっているだけだ。
また、団令子の花屋の店員で、3人組の女の子が出て来るが、これがスリーバブルスという歌手(ミツワ石鹼のCMソングは彼女たちだそう)がやっていて、何度か脚線を披露してセクシー担当もつとめるし、いつも、ドゥワ、ドゥワ、と唄っているのが、面白かった。セクシー担当ということだと、もう一人、春川ますみも出て来る。ジェリー藤尾のガールフレンドでダンサーという役だ。彼女が森繁を誘惑した後に、ジェリー藤尾が登場する、という美人局まがいの場面がある。
あと、笑ったのは、風月組からの果たし状が、速達郵便で届く場面と、台場での果し合いに、風月組は、エレベーターの故障で来ることができなくなり、森繁はずっと待たされるのだが、そのうち、小学生の写生会が始まり、小さな女の子に「動かないで!」と何度も云われる場面ぐらいか。
#備忘で、その他の配役等を記述します。
・フランキー堺の母親は千石規子で、小金治の嫁さんは藤間紫。かかあ天下。
・森繁がクレーム処理係になる象屋デパートの副社長は、坪内美詠子(美子)だ。押し出しがいい。その夫の社長は松村達雄。
・賭場のことを「助かり」と云う場面が2度ほどある。ヤクザ用語か?
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。