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[コメント] スワロウテイル(1996/日)

完璧な映画では無いかも知れない。狙い過ぎ、詰め込み過ぎという批判は真っ当だと思う。でも、これだけの題材を全て飲み込んで、1本の映画という形に消化(昇華)させてしまう岩井俊二の才能に、底知れぬ可能性と憧れを感じてしまう。
Pino☆

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前半は正直言って入り込み難い。でも、中盤から後半にかけては、画面に釘付けになる。そんな映画だ。だから、どうしても嫌いになれない。ともかく、イメージの喚起力が素晴らしい。

 今の日本の経済環境と中国の著しい台頭を考えれば、近い将来、この映画のようなことが起きる可能性は低いように思える。都市化が進む上海を見れば、日本の円を求めて移民しようと考える人など、いやしないだろう。

 でも、地球規模で考えてみれば、貧困や移民の問題は、全く解決の方向へ動いているとは思えない。コソボ、アフガン、イラク・・・、21世紀になっても、政治や社会の歪みが、罪の無い人の暮らしに影を落とす光景は、増幅し続けている。

 フェイホン(三上博史)は、そういった歪みの象徴とも思える。だが、この映画は悲観ばかりしているわけではない。ラストシーンで、リャンキ(江口洋介)とアゲハ(伊藤歩)が交わした屈託の無い笑顔。この笑顔の先に、円都の希望が未だ残されている気がする。

(評価:★4)

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