[コメント] 千年女優(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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題名は松本零士のアニメ『1000年女王 Queen Millennia』('82)から。時空を超えて人間社会を見つめてきた「女王」。その松本ならではの(遠くは宮沢賢治由来の)SF感覚が本作の端緒という事なのだろう。(因みに『1000年女王』の着想は「竹取物語」から) ダジャレの題名はダサい次元だが20年の間を置いて制作、戦国・宇宙と惑わせるが実態は「百年女優」。
そう、月面からの宇宙船打上げシーンの「惑わせ具合」は、『幻の湖』を彷彿とさせる。
数々の邦画の名作をなぞるので、モデルの女優も複数居るのだろうが、何と言っても意識しているのは原 節子。私生活を殆ど明かさず、早々に引退しK県に隠棲した。それはその後を共に老いる事の出来なくなった映画ファンに不思議な感覚を齎らし、彼女は他の女優とは異なる絶対的なアイコンとなった。映画の千代子の暮らし振りは、僅かに伝え聞く原節子の晩年その儘である。とすると、私生活を全く明かさず表の人生を生き抜いた「永遠の恋する人」、渥美 清と立花社長も被って見えてくる。
やはり実写で観てみたくなるが、(1)実写では女優の若作り・老けメイクに耐えなくてはならない。(2)1982年の当時ではこの夢幻変化を表現し切る技術が無かった(特に邦画界には)。だからアニメでいいのだがこのアニメの弱点は、(1)年齢を描き分けられていない。(2)映画の名シーンのコラージュという『ニューシネマパラダイス』演出が、虚構になってしまう。という辺りか。
最後のセリフがネタ割りという事になっているらしいが、「恋する私に恋していたの」というのに特に反発は無かった(残念乍ら感慨も)。誰だって多かれそうでは無いのか、そもそも恋というものは。もう一つ、これは歳月を経て老いた千代子の台詞なのだという事。後悔ではなく、その立ち位置からの言葉なのだから、それが若き日の自分の否定だとは俺は考えない。
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