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[コメント] 過去のない男(2002/フィンランド=独=仏)

これは途轍もなく美しい映画だ。カウリスマキの中でもとびっきり端正なショットばかりだと思う。それは構図もそうだし光の扱いにおいて特にそう感じる。あるいはカッティングの呼吸も素晴らしい。
ゑぎ

 例えば、若者たちに暴行された主人公−マルック・ペルトラがコンテナ住居の子供たちに見つけられ、その父親(ニーミネン)−ユハニ・ニユミラに手当をしてもらった後、コンテナの上で洗濯物を干す女性(子供たちの母親カイザ)−カイヤ・パリカネンの仰角構図が出現するが、これが実に美しいショットだ。あるいは、救世軍の女性役の、いつものヒロイン−カティ・オウティネンとの出会いの場面における仰角バストショットの切り返し。コンテナにオウティネンを招き食事をし、赤いソファに移ってキスするシーン。

 もっと脇役との絡み、例えば港の工場の事務員−エリナ・サロや、銀行の行員−オウティ・マエンパー、そして銀行強盗−エスコ・ニッカリといった人物との絡みでも、バストショット以上に寄った切り返しがバッチリ決まっている。その際、寄り過ぎと感じるショットはほゞない。

 本作はこのように、全編が美しい切り返しの映画だと云えるとも思うが、その全てが肩なめショットの切り返しではない、一人一人を個別に撮ったショットだし、中には小津みたいな正面バストショットの切り返しもある。しかし私は、複数人物を横に並べたり、少し斜めに並べて相似形で見せる構図の方に小津を想起してしまう。例えば、ジュークボックスをコンテナに運び込んだ後、3人の男がスープを飲むシーン。救世軍の楽隊にポップスをやるように云い、ジュークボックスを4人で聞くシーン。主人公とオウティネンが土曜日にデート(森で茸狩り)した夜、楽隊の演奏を聴きに行ったシーンでの、聴衆を映した構図など。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・救世軍の女性マネージャーはアンニッキ・タハティという人。顔の皴すごい。

・コンテナ住居の管理人みたいな人は、サカリ・クオスマネンだ。

・クオスマネンから渡される犬の名前はハンニバル。

(評価:★4)

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