コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ブロンドと柩の謎(2001/カナダ=独=英)

魔性の女キルスティン・ダンストが凄い。間延びした展開だが飽きがこないのは彼女のおかげ…。やはり実際の「オネイダ号事件」が気になる。当時の業界の恐ろしさを感じてしまった。本編よりも事件の背景を調べるほうが楽しいよこれは。
ナッシュ13

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







新聞王ハーストの情婦的な存在であったマリオン・デイヴィス。事件は1924年に起こる。ハースト主催の船上パーティには数々のセレブが招かれ、その中には喜劇王チャールズ・チャップリンの姿もあった。『黄金狂時代』の撮影がリタ・グレイを妊娠させてしまった為に暗礁に乗り上げてしまった頃である。また別のセレブには映画監督兼プロデューサーのトーマス・インスの姿もあった。この事件の核となる人物であり、劇中ではハーストに商談を持ちかける人物として描かれている。そして、インスはこの船上に居たことが引き金となり命を落とす。事実が明らかにされていない為に、インスが銃弾に倒れたのか、または本当に心不全なのか…それは勿論わからない。ただ、チャップリンがマリオンと浮気の関係にあっただとか(どろどろのメロドラマ状態!)インスの死亡記事に関していざこざがあったりするようである。そんな意味で、この映画は(有力な噂に基づき)かなり忠実に再現されているという。いやしかし、劇中で直接な原因は「チャップリンだと思ったらインス」だったという苦笑いモノであったが果たして真相は如何に…。噂が語り継がれるとしたら、もっと真実味のある理由があったりすると思うなあ(笑

実は鑑賞中自分が「チャップリン自伝」を持っていることを思い出してしまった…笑(これはチャップリンの手記で、上下巻が新潮文庫より出版されています)。購入後、なぜか未読のままで本棚の隅でホコリを浴びていたその文庫本を取り出して、何か鍵となる文章は無いだろうかと調べてみることに(自分の情けなさを感じつつ…)。…そしたらありました!で……絶句!!!!!!

以下はチャップリンが手記で綴った内容。

まず、チャップリンとマリオンとの出会いが語られている。『黄金狂時代』の製作中に友人に紹介させられたという。以前からチャップリンはマリオンの派手な言動は承知だったらしく、しかもハースト系の新聞雑誌に必ずといっていいほどマリオンが載られており食傷気味だった(意外ですな)。しかし彼はマリオン主演の『花咲ける騎士道』を「魅力的」だと評価しており女優としての素質は評価していたようである。ちなみにここで言う「花咲ける〜」はペネロペ・クルスの同名映画のオリジナルとは関係なく一般的には『武士道華かなりし頃』として知られている作品のようだ。その後、招かれたパーティを通してハーストの豪華爛漫な生活のことが語られていく。少し小バカにしているのは見逃せなかった(笑)。同時にマリオンのことも語られる。彼女も派手に尽きる女優であり、ハーストと結ばれる理由が伺える。チャップリンとマリオンの思い出話もあるのだが思いを寄せているという直接表現は無かった。しかし注目すべきエピソードがあった。チャップリンとハーストが(よりによって)フェミニズムに関して雑談していたところ、2人の意見が見事に食い違ってしまった。するとハーストは大爆発。チャップリンを怒鳴りつけ、するとチャップリンも怒り出してしまった。その場に居合わせたマリオンは「あの人ね、機嫌が悪いと、まったくだしぬけに、カ、カ、カ、カミナリが落ちるのよ」…と言ったという(苦笑)。つまりチャップリンがマリオンに思いを寄せていたかは定かでないものの、明らかに不思議な三角関係が出来上がっていたということである。少し幼稚なハーストに大人のチャップリン。その中央にいるのがマリオンであったんだろう。

この後、1ページ程ではあるがオネイダ号事件に関して綴られた箇所が!

まず驚いてしまったのはチャップリンが「わたしはそのとき一緒に行っていなかった。だが、居あわせたエリナー・グリンの話によると…」と綴っていることである!!この映画ではジョアンナ・ラムレイ演じるエリナー・グリンが事件について語っているように描かれていく。チャップリンは「全て彼女から聞いた話」として事件が語られているのだ。これには本当に驚いてしまう。そしてグリンの話を聞いたチャップリン曰く「それまで快活にふるまっていたインスが昼食の途中、突然卒中を起こしてベッドに運ばれた。(中略)容態は悪くなるばかりなので、やはりこれは船からおろして、入院させたほうがよかろう」とある。これは脚色がどの程度加わっているのか理解し難かったりするが、あくまでもチャップリンはこのように言い張る。次に驚いたのはインスが亡くなった時間の相違。映画では二日後であったが、チャップリンが言うには診察の結果心臓発作とわかりビバリーヒルズの自宅へと運ばれ、「三週間後」に死んでしまった…というのだ(!)。そしてチャップリンは妙な噂話についても触れている。その内容はこの映画で語られていた「インスがピストルで撃たれた」云々である。

しかしチャップリンは言う。「事実無根」だと。

「彼の死の二週間前に、ハースト、マリオン、そしてわたしとの三人で自宅に見舞ってやったが、そのときなど彼はたいそう喜んで、もうすぐよくなる、と語っていたぐらいだからである」

本当に魔性だったのはマリオンなんかではなく、ハーストやチャップリンやグリンなど、彼女と関係していた人物だったのかもしれない。

参考文献:『チャップリン自伝 下巻 −栄光の日々−』 チャップリン著 中野好夫訳 (新潮社)

(評価:★3)

投票

このコメントを気に入った人達 (2 人)プロキオン14[*] わっこ[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。