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[コメント] 4分間のピアニスト(2006/独)

一見語り口は静かだが、次々にイベントを起こさないと間が持たないような、作り手の息切れが聞こえる作品。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 殺人犯として収監されている元天才ピアニスト少女と、刑務所付きでピアノ指導員をしている老女との触れ合い。才能に恵まれながら、心に傷を受け、投げ遣りに自分を傷つけキャリアを台無しにしてしまう「天才モノ」というモチーフ。

 まず冒頭の、首吊り死体にたじろがない主人公、という描写にどっちらけ。普通、首吊り死体に遭遇したら、どんな人間もたじろぐ(というかそれ以上だ)と思うんだけど、それが映画の中でたじろぐべきものと描かれているのか、それともそうでないのかは、登場人物がたじろぐか否かで初めてわかるわけだよね。映画の中の首吊り死体は本物の首吊り死体ではないとみんな知っているわけだから、どうだびっくりしたろう!的な演出されても、ねえ。いや実際にびっくりしてたら素直に「参りました!」と申し上げるだろうけど、ちっとも驚かなかった者にとっては、さァ。ずいぶん安く見られたもんだなあ、とか。

 まァ、観客を安く見ていると言うよりは、軽々しく信頼しているだけだろうが、描く主目的は主人公の人物性のはずなので、もう少し普通に近いシチュエーションを使ってそういう描写はしてほしいよね。このシーンで言うなら例えば、首吊り死体はいいとしても、ただ声を上げさせない、とか。それだけで十分主人公の心の傷は伝わると思うんだけど。それをこの作品の作り手たちは、死者の服のポッケに手を突っ込ませ、煙草まで盗らせちゃうんだからなあ。そこまで描かないとわからないだろう、と思っているわけで、そういう意味では観客を本当に信頼しているわけではない、とも言えるのだなあ。

 現実に置き換えれば、ここまでやっちゃうのは、完全に精神異常者として出来上がってる(?)奴だよね。話の中では、自分から偽証しただけで実際に人を殺してはいないみたいにされてたけど、ここまで行っちゃったらもはやピアノを教えようが何しようが更生は不可能、表に出しちゃマズいよ。どうしてこういう演出手法でこういう物語を語ろうとするのかが根本的に不可解なんだけど、私の理論(G31人間理論)では精神異常者に真の芸術は産み出し得ないはずなんだよね・・・。

 冒頭シーンに関してだけで長くなっちゃったからもうよすけど、表面的な語り口は静かな割りに、次から次へと事件が起きる賑やかな展開で、語り手の息切れが聞こえてくるような作品でした。 

60/100(08/05/24見)

(評価:★2)

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