コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 男はつらいよ 寅次郎忘れな草(1973/日)

孤独を知る寅さん。『』のザンパノあたりと比べても際立っている。加えて、それと付き合うすべも知っている。
G31

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 流れ者。根なし草。浮草稼業。僕も転勤の多い職場なので、自身の境遇と重ねて見たりすることがある。前作・『夢枕』でも、旅先で客死したテキ屋仲間の墓を弔うというエピソードがあった。映画の表面上にはあまり出てこない、流浪の身・寅次郎のB面を描いてみせたという風情だ。

 「それも上等なアブクじゃねえよな。風呂の中でコイた屁じゃねぇが、背中に方に回ってパチンよ」

 本作での寅は、リリー(浅丘ルリ子)の問いかけに心を寄せ、さらにそれを軽く突き放してやることができる。人としての優しさを持っている。つまり、孤独を知っているが、それに心を占められてしまうことはなく、距離を置いて向き合うことができる。寅の大人びた側面が描かれているのだ。

 それでも寅は、相変わらず、額に汗して土まみれになって働くということはできない。そこがおかしくもあり、切なくもある。端からは迷惑のかたまりにしか見えない寅を、神様みたいに拝んで受け容れているように見える、北海道の酪農一家の純朴な善良さが忘れ難い。

80/100(18/12/29記)

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)シーチキン[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。