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[コメント] EUREKA(2000/日)

ラスト一時間の処理に少し疑問も、やはり宮崎あおいが良い。
ヤマカン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







言ってしまえば「ベルリン・天使の歌」だし「都会のアリス」だし(ラストショットの空撮なんかまんまやんけ!!)、小津への近親性(青山自身がある対談で否定しつつ意識しているのモロバレさせているところ等は微笑ましくもあるが)も含めまるで、なのだが、この事をそう否定的に捉える必要もあるまい。青山真治は日本のヴィム・ヴェンダースであり、田村正毅は日本のアンリ・アルカンだ、と言ってしまっても何も恥ずべき事ではあるまい。実際本作はスタッフ・キャストが充分に仕事を果たした逸品である。

 だが、それにしても、本作が宮崎あおいを欠いていたなら、という”if”にどうしても思考が辿り着いてしまう。勿論、シネスコを大胆且つ自然に使いこなし、ショットに独特の呼吸を与える青山(北野の真似とは言い過ぎ。同系だが似て非なるもの)の演出が、この世界に満ち溢れる光の粒子を一粒も落とすまいとするかのような、触感的とさえ言える程繊細な(アルカン以上!)田村のキャメラが、はたまたやはりこのヒトは凄い、どう切っても凛として画架に収まってしまう役所広司の存在感が、欠けてしまったらという”if”は同様に成立する。しかしそれと宮崎あおいの存在とは最早、レヴェルが一つ違うのだ。現に見よ、長尺である三時間三十七分を見事だれる事なく描き切ったとは言え、肝心のラスト一時間の決してツボに嵌ったとは言えない展開を埋めたのは、正に21世紀のヴィーナス、宮崎あおいの身体と、そこで戯れる光の粒子の淡いまばゆさであった筈だ。これに疑いを持つ者も、次のように言えば誰もが納得出来よう。本作のクライマックスは役所が自転車に宮崎将を乗せてグルグル逡巡する、長く緊張感漲る1ショットですらなく(「キッズ・リターン」はその画だけでクライマックスを築けたのだ)、やはりラストの、貝殻をひとつ、ひとつ、決して張りのあるとは言えない声をあげながら放り捨て、役所の声に応えて振り向く宮崎あおいのクローズ・アップのそのまばゆさだったのだ(でなければあのようにハイキーで処理出来まい!)。ファーストショットとラストショットを宮崎のクローズ・アップで締めたところに、本作の総てがあると言っても過言ではない。勿論青山他が無策だったと言う訳ではない。これは宮崎の禍禍しい存在が映画そのものを食らい尽くした瞬間なのだ。こんな女優は正に稀有。その思いを新たにした(だからどうしてカンヌは主演女優賞を宮崎に与えなかったのだろう!!)。

 本当に恐ろしい女優だ。

(評価:★4)

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