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[コメント] ハリー、見知らぬ友人(2000/仏)

日常の生活の、ふだんは隠されているちょっとした不協和音と違和感。ゆっくり暴かれる人物像には何度かの軌道修正が必要で、そこに緊張感が続く。
カフカのすあま

「そこに至るまで」の思考遊びが楽しかった。どうしてハリーはここまで主人公にこだわるのか。あれかな、これかな、と観る側が考えるスピードと、作り手から少しずつ明かされる手がかりのようなものが、ちょうどよい具合にからみあう。

結果だけみると、無責任に、意地悪に投げ出された感があるかもしれないけれど、結果がどう、というよりは、「そこに至るまで」が楽しめる映画なのだと思う。

家族でお出かけのクルマの中でつのるイライラ感。観ているこちらが「あああああ」と叫びだしたくなるほど苦痛。充満する諦め。弛緩する時間。なにをやっても相手からは認めてもらえないという思い込み。忘れていた夢。

主人公の筆が走り出した瞬間の、その一瞬の「つながった」感覚の満足感は、その他もろもろの暗い結末に勝る。

主人公が書くために選んだ場所は、親に押し付けられたあの悪趣味なド・ピンクの浴室であるというねじれ。

さらに、再認識の原因となったのが、記憶されなかった少年の、現在を過去に結びつける熱心な声だったという皮肉。

この映画により経験した感覚は、おそらく、当分のあいだ忘れることができないと思う。

(評価:★4)

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