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[コメント] ゴールデンスランバー(2010/日)

この映画が一番いいたいのは、いわば、人と人の関係を形成しているのはこれまでの「履歴」なのだ、ということではないかと。
蒼井ゆう21

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







主人公を助けてくれる人々(や「モノ」や「出来事」)はけして彼の「現在」的な人間関係ではなく、「かつて」彼らと出来事を共有した人たちばかりである。サークル活動やアルバイトををともにした大学時代の友人元恋人や、アルバイトをした花火工場の人、強盗に襲われるのを救ったアイドル、その話をネタにしてキャバクラ嬢と付き合えた同僚、さらには主人公の親(メディアに対してお前らは一体息子の何をしっているんだと叫ぶ)。この映画では彼の現在的な人間関係はほとんど出てこない(例えば現在付き合っている恋人やその他)

その点で、人と人との「信頼関係」とはけしてすぐその場で出来上がるものではなく、過去の出来事が積み重なって初めて現在に発生するものであるんだなと。

この映画が一番いいたいのは、いわば、人と人の関係を形成しているのはこれまでの「履歴」なのだ、ということではないかと。

イメージ操作によって即席的に犯人に仕立て上げられてしまった「現在」の主人公の即席的なイメージを人々はすぐさま信じてしまう(彼らは彼との具体的な関係をこれまで結んでいたわけではなく、その点では「本当」は何も知らないのに。その点にメディア批判でもあるのだろうか・・)

しかし、本来その人について本当に「わかる」には、具体的な関係の履歴の積み重ねが必要である(と、この映画は言っているようにも思える。)いわば「過去の履歴」対「即席的な現在的イメージ」の対立。そして過去の履歴が勝利した。というふうにも読み取れるんではなかろうかも思う。

即席的に作られた犯人は履歴がないのですぐに人々から「忘れ去られ」、文字通り「消えた」。ので、主人公は心配せずにすぐに新しい自分になり、生活を始められた。と同時に、かつての恋人もまた消えていった。なぜなら、彼は新しい自分になり、彼女との履歴も消滅したからである。

ところどころ都合が良すぎるような展開が多いが、それを超えるくらいに面白かった。

(評価:★4)

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