クドカン特有のスピーディーな展開は、観る世代を限定してしまいそうだが、最近の老人は若々しいし、この手のスピードが今後は主流になるのかも。 日本のコメディって観客を意識し過ぎて、どこかで均衡を計ってしまったり、物語に説明付けたり辻褄合わせに奔走してしまってギャグの切れがイマイチになるものが多い。

しかし本作は、クドカンの脚本が、やりたい放題。主演の阿部は水を得た魚のように最初から最後迄ノンストップで暴走してくれます。 最初は、うるさすぎて鼻につくものの、ここまでどっぷり主役然として出ずっぱりだと、観客も嫌でも主人公のキャラクターを把握し尽くしてしまうので後半迄には慣れてしまう。 ここまで主人公の比率が脇役に対して9：1で描かれる作品も珍しい。

で、主役の阿部を追うように堤と、柴咲がコメディエンヌぶりを魅せてくれる。抑えの演技の方は初々しい小出と、ベテラン伊東、吉行が引き締める。

この物語の魅力は主人公の阿部が、ライバル視する堤に負けたくない一心のみで、次々と変身して行く部分であり、そこが醍醐味なのだが、彼が野球選手や役者へと次々変身する度に、周囲のスタッフ（生瀬、キムラ）らも一緒に変化して行くのが、どーもブレンダン・フレイザー主演の「悪いことしましょ」の二番煎じぽいのが残念。

快調に祇園をキーにオフビートなコメディを展開しつつ、ラストは結局は、大団円に、まとまる方向に行くのが残念．最後迄、観客を裏切り続けて欲しかった。舞台の上で主演の二人が舞妓に扮して踊る姿とか全然面白く無いし、制作サイドだけで盛り上がってて異様につまらん。

ところで舞妓姿が、ふんわりして異様に可愛い小出がメイクを取ると地味な顔で、シャープな美貌の柴咲が舞妓のメイクをすると不細工になるのは伝統化粧の妙。 つくづく舞妓の白塗りって日本人特有のポッチャリして彫りの浅い顔に最適なのぬ。 ヒロインとしての存在感は柴咲に見せ場はある物の、トータルして小出の圧勝。ただ小出が役得な面も大きく、彼女の役柄を長澤まさみか、広末涼子（昔の）辺りで観てみたかった。…。