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[コメント] 獄門島(1977/日)

石坂浩二の金田一シリーズ3作目。準備期間が短かった為か、シリーズ中、もっとも観客を置いてけぼりにし暴走する犯人像。シリーズ魅力の悲しみ、田舎の因習、作品に漂う切なさの薫りも薄い。キャストが豪華なだけに空回り感が一番切なかったり。海のロケーションは素晴らしい。
TOBBY

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惜しい。これだけ、もっと面白くなり得る素材や雰囲気のある映像を散りばめて起きながら組み立て段階で奇麗に失敗している。役者に至っては問題がなく、石坂筆頭に坂口三木加藤らレギュラーキャスト陣は作品を楽しく彩る。毎回違った演技で楽しませる草笛光子に至っては本作ではどさ回りの役者兼、祈祷師のキーパーソンを熱演。予定日でも無いのに恨みのために陣痛を起こしたり、義父(東野)に犯され、狂う様を鮮烈に僅かなシーンで演じ、強烈なインパクトを残しオカルトな雰囲気も盛り上げてくれる。作品によって演技に波のある大原麗子も監督との相性の良さからか、きちんと要求された旧家の娘で美人だが芯の強い娘像を演じ切り、シリーズ中、最も好感のもてるヒロインではなかろうか?。頭の弱い三姉妹の長女を演じた浅野ゆう子も蔵での祈祷シーンは迫力があり好演。サポーティングながら太地喜和子もポンポンと歯切れ良いエロキューションで出演シーンでは一人で場をさらう。ところが、せっかくの彼女は中盤以降、あっさり忘れられた存在へ。結局、中盤辺りから一気に脚本が怪しい方向に動きだすのが本作の問題点。今回の美しき殺人鬼・司葉子にしても不幸な少女時代から殺人への動機付けが異様に苦しく、もう一人の殺人鬼・佐分利信に至っては僧侶でありながら殺人に走る経緯と理由に説得力が皆無。無差別殺人鬼やサイコパスな犯人ではなく本シリーズは理由ありき殺人が魅力なのであるから、本作の動機は苦しすぎる。…。ゆえに冒頭で絵巻を見せながらナレーションで獄門島の先祖たちは皆、流刑者たちである。と、苦し紛れに島民たちの血筋の悪さで逃げようとしているのが悲しい。結局、後半、犯人に少しも同情の余地がなく、シリーズ中初めて「なんじゃ、こりゃ?」と思う作品になってしまった。そもそもサスペンス好きには佐分利が若い僧侶に寺を譲りたがったり、石坂の前で凶器を落としたりと早々に出された解りやすいヒントで不安が過ったのでは?。ただ例によって昭和20年代を想定したロケーションや、世界観が素晴らしいし、役者たちの演技に敬意を評し★3つ。海の雄大さと音楽の明るさもプラスに貢献していた。

(評価:★3)

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