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[コメント] ガタカ(1997/米)

ジェロームと私は違う。ジェロームと違って私は地球上に1人しかいないし、これからがある。そう思い、この映画を見るたびに、ヴィンセントのように「がんばってみよう」と思えるのだ。
まゆ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







とてもとても好きな映画。久々にまたDVDを見ました。

 遺伝子などで、その人の能力全てが判断され、将来も決まってしまう。そんな世の中になってしまうと人間どうなってしまうでしょう。不適正と判断された人間は、どのように生きていくだろう。もし私が不適正と判断されてしまったら・・・夢をみたり夢を追いかけるということ自体がなくなってしまうかもしれない。まぁ今だってたいそうな夢があるわけではないのだけれど、それでも生きていく価値はそれなりに見出せていると思う。

 しかし、このガタカでは生きてしまった不適正者たちは、ただ生まれてしまったために生かされている、社会から必要とされているかどうかも判らない、生まれながらに劣等感を感じながら生きていく・・・というなんとも悲しい世界が描かれている。

 そのなかで、ヴィンセントが夢を見つづけたこと。それは、実は今の人々がもつ夢となんら変わらないのかもしれない。高校時代の同級生が「宇宙飛行士になりたい」と言っていた。彼は本気だった。昔付き合った人のなかにも「ロケットを作りたい」という人がいた。その彼も本気だった。そんな少年たちが抱く宇宙への憧れ。それは、「不適正者」だって一緒で、夢をかなえていくためのプロセスは、人それぞれ。ヴィンセントがどんな手段を使ったとしても、夢に向かって諦めずに努力した姿は立派だったと思う。なかなかできることじゃない。同級生だった彼も元彼もそれぞれの方法で夢を追っていたが、私はどうだっただろうか。そう思うと、彼ら(同級生、そして元彼、そしてヴィンセント)には、頭が上がらない。

 実は、私は映画の中ではどちらかというと、ヴィンセントよりもジェロームに感情移入してしまった。「適正者」という意味ではなく。なんとなく周囲から期待されてきたエリートが思うようにならない、期待にこたえられない辛さ、そして重圧というのは小さいころから感じてきたことだった。そのなかで、自分よりも能力的には劣っていると思っていた人間に超されていく悲しみ、残される寂しさ。

 今考えるとそれもこれもヴィンセントのように努力することを、怠った私が悪いわけだけど、それまでなんでも思うようにいっていた私が1つ思うようにならないことで崩れていき、投げやりになっていき、だけれどもプライドが邪魔して周囲に当たることもできず弱音を吐くこともできず、自分の中にそれをしまいこんできた。そして、辛いことからは逃げ、目をそむけ、楽なほうへと逃げ、楽しいことだけを追い求めてきた。それが今の自分。

 それを認めることができたときに、ジェロームは燃えるしかなかったけれど、私は違う。ジェロームと違って私は地球上に1人しかいないし、これからがある。そう思い、この映画を見るたびに、「がんばってみよう」と思えるのだ。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)さいた[*] リア わさび[*]

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