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[コメント] サンセット(2018/ハンガリー=仏)

誰かこの娘を止めとくれ!☆3.8点。
死ぬまでシネマ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







映画はエマ=ワトソン似の主人公イリス(ヤカブ=ユーリ)が一点凝視する緊迫気味のアップから始まる。ところが画面が引いていくと店員に話しかけられてそこが帽子店だった事が判り、更にイリスが「募集広告を見ました」と言うので店員が「早く言えや、オラ!」と憤慨する、というトボけた導入部なのである。この時点で映画は既に"奇妙な臭い"を発している。

映画は流行りの主人公にくっついて移動する長回しが多く、ロングの画面が少ないので(イリス目線のロングはある)、観客にとっての情報は少ない。更にはカメラはイリスのみを見せる短焦点が多いので、薄暗いブダペストの街は印象派の絵画の様に常にボヤけている。このカメラは非常に上手い。19世紀を描く様な映画では、予算の都合上何から何迄再現する事は出来ず、結果ご都合主義のアングルや舞台となり、果ては登場人物の振る舞いにまで制限が掛かる事も少なくない様に思うが、この映画では本当に映るものが写っている感覚になっている(都合の悪いものは焦点を飛ばしてしまえばいのだ)。

兎に角主人公の行動力が尋常ではない。軽く無謀の域を突破し、自暴自棄、或いは狂気に迫っている。常に出たり入ったりと動き回っている主人公にカメラはパパラッチの如く追い縋る。そして周りの人物たちは彼女に近寄っては一言二言謎めいた言葉ばかりを残して立ち去ってゆく。これは詰まり、RPGゲームなのだ。画面の構造が謎解き型のRPGなのだと気づいた時、これはゲーム狂の友人イリスが「オリャーッ」とか叫び乍らガンガンRPGゲームをカっ飛ばすのを、横で観ていればいいのだと理解した。アイデア勝負と画面の上手さで☆3.8点。

     ◆     ◆     ◆

しかし生き別れの兄をボコボコにして沈めちゃイカんよ。これは絶対に。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)けにろん[*]

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