[コメント] 震える舌(1980/日)
「啓発映画は恐怖映画で良い」by『ピカドン』
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愛娘の事を考えるが故にボロボロになってゆく夫婦。渡瀬恒彦が演ってるからそういう父親になるとも言えるのだが、適役であり名演だと思う。十朱幸代もなかなかサバけた奥さんで、現代(21世紀)の人間よりずっと素朴でずっと強い筈の<昭和>の夫婦が、かくもボロボロになってゆく様は視ていて非常に辛い。
ペンクロフさんの言葉を待つまでもなく、この映画は『エクソシスト』('73/米)そのものだ。暗い部屋のベッドで、苦しむ女児が体を弓なりに引き攣らせつつ歯を喰いしばる。宙に浮くかどうかの違いでしかない。否、恐らく嘗ては破傷風に冒された多くのひとが光や音の刺激に痙攣を起こす様を見て、人々は悪魔や怨霊の仕業と畏れ慄いた事だろう。
嘗て人類を苦しめた天然痘やポリオ(小児麻痺)と違って、破傷風は近い将来消滅する予定も可能性も無い。広く土壌に生息する常在菌だからだ。この恐怖は、生きている限り日本人にとっても忘れてはならない恐怖なのだ。
最初に問題ないと言った医者はヤブ、という事になるのだろうが、昔の医者は親を安心させる為に「大丈夫です」という言葉をよく使っていたと思う。宇野重吉も中野良子も、「振る舞う医者」を見事に演じている。(蟹江敬三・加藤健一も出ています)
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屋外作業をするひとに破傷風は常に危険要因だ。海外協力隊や自衛官だけでなく消防隊員、建設現場でも予防接種の徹底が望ましい。屋外スポーツで怪我して病院なんぞ行くとブスリとやられるが、正しい自己免疫がつくのは3回の注射が必要らしい。それでも10年経てば元に戻るので要注意。
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